平野 真弓(ひらの まゆみ)氏
BeeX デジタルプラットフォーム本部/ハイブリッドクラウドコンサルティング部
音大からAWSエンジニアへ
「ダイバーシティ&インクルージョン」といった言葉が浸透している中で、日本のIT業界における女性進出は他業界よりも一足早いという印象が強い人も多いのではないだろうか。しかしながら、実際に情報サービス産業協会(JISA)による調査結果[※1]を参照してみると、男女比約8:2と大きな偏りが伺える。特に、管理職に占める男性の構成比は93.7%と、本調査結果を参考にしただけでも女性の活躍が活発な業界とは言い難いかもしれない。
ここに至るまでの要因はいくつもあるかもしれないが、実際にIT業界で活躍している女性からはどのように見えているのか。今回は、BeeXでAWSに関するコンサルタントとしても活躍する平野真弓氏を訪ねた。
同社は、SAPなどの基幹システムを中心としたパブリッククラウドへの移行を得意とする企業であり、その中で平野氏はAWSを専門としてコンサルティングやシステム構築に携わっている。一見すると学生の頃からプログラミングなどに興味を持ち、理系の学問を専攻していたようにも思えるが、なんと学生時代は東京藝術大学で音楽研究を専攻していたという。
5歳からピアノをはじめて高校まではピアノ演奏を専門としており、大学受験を機に音楽研究に転向。卒業研究では、CDが売れない時代においてなぜボーカロイド市場は盛り上がっているのかを研究していた。とはいえ、藝大卒業者の多くが音楽や美術に関係する道に進むことが多い中で、なぜエンジニアを志したのだろうか。
平野氏は、「学生時代には自主企画のコンサートに舞台スタッフとして携わっており、そうした仕事に就くことも考えていました。しかしながら、コンサートは夜に開催されることが多いだけでなく、全国を飛び回ることも少なくありません。体力面に自信がなかっただけでなく、将来的に家庭をもつことを考えると働き方として難しい部分があると感じました。そこで、新卒でITベンダーへの就職を決めました」と振り返る。
このとき、就職活動の軸として自立できるだけの安定した収入、在宅勤務が可能で1つの業界で長く働きながらステップアップをしたいという思いがあり、IT業界を選んだという。しかしながら、入社した会社が理系以外の出身者をエンジニアとして採用することが初めてであり、技術研修0日でOJTという形で現場に配属されたと平野氏は笑みをこぼしながら語る。1年程Webアプリの開発や物理サーバーのキッティング、運用などいろいろと挑戦するうちにインフラエンジニアとしての適性を見出され、クラウドに挑戦。ここから、平野氏はAWSに取り組み始めたという。
「会社としてクラウドをやってみようというタイミングと重なりAWSに挑戦することになりましたが、社内におけるAWSの経験者は0人でした。そのため、自分自身でゼロから勉強を進めていきましたね。公式のウェビナーを受講することはもちろん、とにかく手を動かしながら必死にやっていました。正直、プログラミングをしているときには難しくて辛く、適性がないと感じることもあったのですが、インフラを触りだしてからは、結構おもしろいぞと思えたのです。学生時代にコンサートの裏方などをやっていたこともあり、縁の下の力持ちのような仕事が好きだったことを思い出したんです(笑)」(平野氏)
実際にAWSを触り始めて一番苦戦した部分は、ネットワーク周辺の知識だったという。基礎研修がなかっただけでなく、社内にインフラ専門の人がいたわけでもなかったため、詳しそうな人を探しだしていろいろと聞いて回った。その上で、実際に触りながら書籍やWebで勉強したことを、“もしかしたら、こういうことなのかもしれない”と自分の中で理解を深めながら現在までスキルを積み上げてきたと平野氏は説明する。
[※1] JISA、『2020年版 情報サービス産業 基本統計調査』より「2.4就業状況」「2.4.1 従業員構成、労働時間、有給休暇」