注目集める「Web3.0」に期待もサービスなどに課題
──近年、ブロックチェーンやメタバースなど新たな技術の実用化が進み、次世代のインターネットの在り方を表す概念として「Web3.0」が急速に注目を集めています。
本当にさまざまなテクノロジーが出てきましたよね。カギとなるのは「ブロックチェーン」の技術です。これまでWeb2.0を牽引してきたGAFAに代わり、「DAO(ダオ)」と呼ばれる分散型自律組織が注目されたり、コピーが容易なデジタルコンテンツに資産的価値を付与する「NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)」が実用化しつつあるなど、ブロックチェーンを軸とした様々なテクノロジーが続々と登場しています。メタバースも空間の定義という意味では、ブロックチェーンの活用例の一つといえるでしょう。
もちろん、一つひとつのテクノロジーやサービスについて、本当に浸透するかどうかはわかりませんが、「誰もがそろそろ新しい波が来ることを感じて期待している」状況であることは間違いないと断言できます。多くの人がWeb2.0時代のプレーヤーであるGAFAをはじめ、SNSではFacebookやTwitterなどの大活躍に飽き飽きしていて、「もういいでしょ」と心理的な変化が起きている。そういたネガティブな気持ちからも、新しいプレーヤーに対する待望やプラットフォームの変化などポジティブな期待感も高まっています。「変わりたい」「変わってほしい」というエネルギーが満ちてきていて、実際のところ「今を変えたい」という人は、「必死に頑張っている」フェーズなのではないでしょうか。
──マイクロソフトは、Web2.0の勝ち組として挙げられることも多いですね。そんな同社のエバンジェリストとして活躍する西脇さんは、Web3.0に対してどのような期待を抱いているのでしょうか。
まず、一般論でいえばWeb1.0の時代、いわゆるブログやWebサイトなど情報の流れが一方通行だったものがWeb2.0で双方向になったわけですよね。そこに空間の定義が加わり新しい経済活動が起きることがWeb3.0であり、様々な可能性が広がっています。たとえば、ネット上での会議は平面でしたが、それが空間に広がってくるとメタバースはもちろん、デジタルツインのようなネット上に『もう一つの地球』ができるなど、新しい空間が作られるでしょう。そのような空間的な拡張に期待をしています。
そして二つ目は、リアルで実現できることだけでなく、それ以上のことも含めて誰でも参加できるような世界を実現できる点です。私たちのいるリアル空間では、ハンディキャップをもつ人にとって参加しにくい領域がまだ残っていると思います。でも、Web3.0の世界になれば、その制約がもっと小さくなり、誰もが自由に参加できるようになるのではないでしょうか。たとえば、家にいながらベッドの上からでもまったく別の世界に行き、実空間と同じ体験をするなど、色々なことができるようになるでしょう。もちろん、Web2.0の世界も残りますが、新しい空間やコミュニティが登場し共存するイメージですね。
ただ、私がはっきりと「Web3.0が来たぞ!」と宣言できないのは、Web3.0を代表する『キラーアプリ』がまだ登場していないからです。メタバースが話題になっても、まだ決して「普及した」と言えるレベルにはなっていないですよね。現に何億円もかけたメタバース空間に行ってみても毎日10人しか来ていないとか、残念ながらそれが実情です。Web2.0におけるTwitterやFacebookなどに該当するサービスやコンテンツが出てこないと、「Web3.0到来!」とは言い難いでしょう。
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