【東芝 福本氏 ✕ ローランド・ベルガー 小野塚氏】カーボンニュートラルは協調領域であり企業価値向上でもある
ウイングアーク1st主催:「updataDX22」レポート #04
カーボンニュートラルに向けた世界的な取り組みが急速に広がっている。特にサプライチェーンで発⽣する温室効果ガスの排出量管理として、「Scope3」(事業者の活動に関連する他社の排出)までを把握・管理し、対外的に開⽰する動きが強くなっている。ウイングアーク1st主催で開催された「UpdateDX22」では、東芝の福本勲氏とローランド・ベルガーの小野塚征志氏が、カーボンニュートラルへの取り組みについて語り合った。

株式会社ローランド・ベルガー パートナー 小野塚 征志氏(右)
まずは「可視化」からはじめよ
東芝 福本 勲 氏(以下、福本氏):まずはじめに、カーボンニュートラルとは何か、なぜ必要なのかを整理したいと思います。カーボンニュートラルは、温室効果ガス(GHG)を排出した分の、貯蔵、分離、回収などをしてネットゼロ=プラスマイナスゼロをめざしていく取り組みです。その背景には、進行する地球温暖化があります。
その取り組みは全世界的に広がり、対外的な開示が求められています。たとえば、自動車のサプライチェーンの場合、部品サプライヤーは自動車メーカーに部品を収めるだけではなく、製造工程でどれだけGHGを排出したのかを報告しなければなりません。また、自動車メーカーも、お客様の運転によって、どれだけGHGを排出するかを算定する責任も問われます。さらに、サプライヤーから部品の供給を受けた時に、どれだけ累積で排出してきたか報告する必要があります。
製品の輸送、廃棄から、ホワイトカラーの移動に伴うGHGの排出まで、サプライチェーンに紐づく関係者と取引先すべてのGHGの排出を意識する必要が生じます。
たとえば、Appleは2030年までに脱炭素化を実現する目標を掲げて、サプライヤーに対しても省エネルギー化と再生可能エネルギー利用を求めています。こうした企業と取引を継続するための、カーボンニュートラル化への要求は今後ますます高まると思いますが、小野塚さんはどのように見られていますか?

ローランド・ベルガー 小野塚 征志氏(以下、小野塚氏):最終的には、GHGの排出をなくすことがゴールですが、そのための前提条件があると思います。「今どれだけGHGを出しているか」が見えないと取り組みは進められないということです。そのため、われわれがコンサルティング会社として提案しているのが、1)排出量を「可視化」する、2)削減の施策を進める、3)どうしても削減できない分は、最終的にはカーボン・オフセットで埋め合わせをする、という3つのステップです。まずは、可視化することが重要です。その場合、Scope1(事業者の直接排出)、Scope2(他社から供給された間接排出)という自分たちが見えている範囲だけでなく、サプライヤーも含めた全体として、どう可視化するかがポイントとなります。
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京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)
ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZineには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail : k...
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