日本電信電話(以下、NTT)と宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)は、宇宙データセンターの実現に向けて宇宙統合コンピューティング・ネットワークへの適用を目指した、宇宙空間におけるコンピューティング環境とデータ処理についての共同研究を2023年1月から開始していると発表した。
両者は、技術融合による社会インフラ創出(社会課題の解決につながる革新的な光ネットワーク・インフラの構築等)を目指した協力協定を2019年に締結しており、「地上と宇宙をシームレスにつなぐ超高速大容量でセキュアな光・無線通信インフラの実現」を目指すべき世界観として共有した共同研究に取り組んでいる。
今回新たに開始した共同研究では、衛星観測データから必要な情報をより早く効率的に地上に届けるための処理を行うコンピューティング基盤へのAI技術の適用性を検証。NTTは、観測データから特定対象物やイベントの識別に多層推論技術を活用することで、宇宙から地上へ伝送するデータ量を必要な情報に絞ることで減らし、限られた通信リソース内で準リアルタイムに地上局へ転送することを目指した研究を行うという。
また、JAXAは地上民生分野において急速に拡大するAI技術を持つプレーヤーが、軌道上で地上にて開発されたAIアルゴリズムを活用する際の障壁となっているソフトウェアの開発環境について、コンテナ技術の活用により、地上と同じ環境で開発が可能となるようなソフトウェアフレームワークと、これらのソフトウェアが軌道上で動作可能となる宇宙計算機環境を構築。同フレームワーク上では、軌道上であってもAIアルゴリズムが容易に書き換え可能であり、地上で検討された様々なアイデアや学習されたAIアルゴリズムの速やかな軌道上実証を可能にするとしている。
NTTの役割
- AI処理アルゴリズムの検討、評価・改善
- 宇宙計算機環境(iGPU, VPU)の評価・最適化
- AIアプリケーション実装を含めた実機検証
JAXAの役割
- ソフトウェアフレームワークを含む宇宙計算機環境の提供
- AIアプリケーション用衛星観測画像の提供
- ソフトウェアフレームワークの改良検討
なお、共同研究は、JAXAの小型技術刷新衛星研究開発プログラムにおける研究課題「衛星システムのデジタル化(ソフトウェア化)」に基づいて行われる。今後両者は、協力協定に基づく研究開発を通じて社会課題の解決に貢献するとともに、「宇宙統合コンピューティング・ネットワーク」の実現につなげていくという。