情報処理推進機構(IPA)は、生成AIの安全な利用に必要となるリテラシーを向上するため、デジタルスキル標準(DSS)とITパスポート試験のシラバスに生成AIに関する記載を追加した。
デジタルスキル標準の改訂
急速に普及する生成AIがもたらす各企業のDXの促進やビジネスへの影響を考慮し、有識者によるワーキング・グループで検討を行い、デジタルスキル標準の一部である「DXリテラシー標準(DSS-L)」の改訂を実施。生成AI利用において求められるスキル、リテラシー習得の必要性を強調して示すとともに普遍的な骨格を維持しつつ、各スキル項目に説明や例示を追加してるという。また、マインド・スタンスでは、既存の7つのスキル項目と分けて「生成AI利用において求められるマインド・スタンス」のページを追加。生成AIを生産性向上やビジネス変革等へ適切に利用すること、生成AI利用における注意点を理解していること、生成AIの影響について変化をいとわず学び続けることなどのスタンスが示されている。
生成AI利用において求められるマインド・スタンス(2023年8月改訂補記)
- 生成AIを「問いを立てる」「仮説を立てる・検証する」等のビジネスパーソンとしてのスキルと掛け合わせることで、生産性向上やビジネス変革へ適切に利用しようとしている
- 生成AI利用において、期待しない結果が出力されることや、著作権等の権利侵害・情報漏洩、倫理的な問題等に注意することが必要であることを理解している
- 生成AIの登場・普及による生活やビジネスへの影響や近い将来の身近な変化にアンテナを張りながら、変化をいとわず学び続けている
ITパスポート試験のシラバス改訂
ITパスポート試験のシラバス改訂では、AIに関する既存の記載に生成AI関連の記載を拡充したほか、法務やセキュリティに関する項目にも生成AI関連の記載を新たに追加。たとえば、ITパスポート試験の「ストラテジ」分野における「ビジネスシステム」の項目では、「AIの活用領域及び活用目的」の記載箇所に「生成AIの活用(文章の添削・要約、アイデアの提案、科学論文の執筆、プログラミング、画像生成など)」を追加しているという。また、「AIを利活用する上での留意事項」の記載箇所に「AIの出力データにおける、誤った情報、偏った情報、古い情報、悪意ある情報(差別的表現など)、学習元(出典)が不明な情報が含まれる可能性」などが追加。さらに、「著作権法」の項目では「AI が学習に利用するデータ、AIが生成したデータについて、それぞれ著作権の観点で留意する必要があること」を追加している。
なお、今回のシラバス改訂を受けたITパスポート試験における出題は、受験者への周知期間、学習期間等を踏まえ、2024年4月の試験から開始する予定だという。生成AIに関するサンプル問題は、8月下旬以降に公開予定とのことだ。