“世界でトップを目指す”資生堂、グローバルでの業務標準化に向けて大規模に基幹システムを刷新へ
第15回:資生堂インタラクティブビューティー IT本部 デジタルプラットフォーム部 部長 櫻井佳子さん

創業151年目、世界約120の国と地域で事業を展開する資生堂。2030年までにスキンビューティー領域で世界ナンバー1になることを掲げる同社にとって、目下の挑戦は2019年に始まったグローバル規模の基幹システム刷新プロジェクト「FOCUS(First One Connected & Unified Shiseido)」だ。従来、商習慣の異なる国ごとに個別管理していた基幹システムを統合し、シングルインスタンスの実現に取り組む。業務プロセスを標準化しベースとなる経営基盤を再構築することで、“世界で勝てる状態”を目指すという。様々なプロジェクトに携わる資生堂インタラクティブビューティー IT本部 デジタルプラットフォーム部 部長 櫻井佳子さんに聞いた。
顧客と接する“現場発”の声を内製で実装
櫻井佳子(以下、櫻井):資生堂というと化粧品を思い浮かべる方が多いと思いますが、ビューティーウェルネスという視点で健康や内面の美しさにもフォーカスした事業や、レストラン、教育・保育の事業なども展開しています。
2021年、アクセンチュアと共にスタートした資生堂インタラクティブビューティーは、資生堂グループのDXを加速し、お客さま一人ひとりに最適な新しいビューティー体験を提供していきます。私が所属する部門では、店頭システムやECサイトなどのサービス開発から、社内インフラの構築・運用、端末管理、業務効率化のソリューションやITヘルプデスクなど、社内外のユーザーに向けたITサービスを管理しています。

酒井真弓(以下、酒井):資生堂の店舗に行くと、美容部員(同社では「パーソナルビューティーパートナー」と呼ぶ)の方が肌のキメや透明度、シワなどを測定してくれて、今の私に最適な基礎化粧品や生活習慣などをアドバイスしてくださいます。こうしたシステムは、内製で開発されていたんですね。
櫻井:そうなんです。研究員やパーソナルビューティーパートナーと意見を出し合って、企画から機器の製造まで独自開発しています。
資生堂は1916年に商品開発・改良を担う「試験室」を開設して以来、100年以上にわたって皮膚科学に関する基礎研究を行っています。店頭での肌測定は、お客さまの肌を撮影して分析するのですが、通常のカメラでは照明などの影響で正確に測れません。そのため、光が入らないように肌に機器を密着させた状態で撮影し、研究所が定義したアルゴリズムに則って分析します。
以前は正確に分析するため、お客さまに測定部分のメイクオフをお願いしていました。でも、これからお出かけするお客さまもいますし、外出先でのメイクオフは容易いことではないですよね。パーソナルビューティーパートナーから挙がってくるこうした声を受けて機器を改良し、今はメイクしたままでも測定ができるようになりました。
現在は肌分析のシステムを刷新中です。機器の試験では様々な環境でも正しく動作することを担保するため、マイナス30度から高温60度までの過酷な環境でのテストも実施しました。
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酒井 真弓(サカイ マユミ)
ノンフィクションライター。アイティメディア(株)で情報システム部を経て、エンタープライズIT領域において年間60ほどのイベントを企画。2018年、フリーに転向。現在は記者、広報、イベント企画、マネージャーとして、行政から民間まで幅広く記事執筆、企画運営に奔走している。日本初となるGoogle C...
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