Kasperskyのグローバル調査分析チーム「GReAT」は、年次のサイバー脅威動向レポート集「Kaspersky Security Bulletin」において、2024年のAPT攻撃の進化を中心に知見と予測を発表した。
GReATのリサーチャーは、APT攻撃者がモバイル、ウェアラブルの各機器やスマートデバイス上に新たなエクスプロイトを仕込んでボットネットを形成するAIを活用し、効果的なスピアフィッシングを行うサプライチェーン攻撃の手法を洗練させるとレポートにおいて述べている。そしてこれらを2024年の高度な脅威として予測し、このような脅威の進化は、政治的動機に基づくサイバー攻撃やサイバー犯罪の激化につながる可能性があるとのこと。日本においては、金銭的動機による多様なサイバー脅威が増加、継続するとみている。
モバイルを狙った高度なエクスプロイトの台頭と新しいボットネット、AIを活用したなりすまし
同社のリサーチャーが発見し、6月に発表したiOSデバイスを狙ったAPT攻撃活動「Operation Triangulation」は、モバイル向けエクスプロイトを使用した攻撃として革新的であり、この発見をきっかけとして、モバイル、ウェアラブルの各機器やスマートデバイスを標的とするAPT攻撃に関する調査がより促進される可能性があるという。攻撃者も脆弱性の悪用や「サイレント」なエクスプロイトの配布手法により、様々なコンシューマーデバイスを標的とした偵察活動を広げることが考えられる。
これには、メッセンジャーを介したゼロクリック攻撃、SMSやメッセージアプリを介したワンクリック攻撃、ネットワークトラフィックの傍受などが含まれる。個人用デバイスと企業用デバイスの保護がますます重要になってきているという。
同社は、一般的に使用されているソフトウェアや電子機器の脆弱性の悪用も、注意しなければならないもう一つのポイントを上げる。深刻度の極めて高い脆弱性が発見されても、調査が限定的で修正が遅れることがあるため、標的型攻撃が可能な大規模でステルス性の高いボットネットの新たな形成につながる可能性がある。
新たに登場しているAIツールによって、スピアフィッシングのメッセージ作成が効率化され、特定の個人になりすますことが可能になるほか、オンライン上のデータを収集して大規模言語モデル(LLM)に取り込み、標的とつながりのある人物を装って文章を自動作成するというような巧妙な手法の出現が考えられるとのことだ。
日本:金銭的動機によるサイバー攻撃が増加、これまでの攻撃も継続
日本では、多数の投資企業やフィンテック企業が執拗なサイバー脅威に遭遇している。2024年、金融分野の企業は、金銭を目的とする脅威アクターの主要な標的として浮上し、エスカレートしたリスクに直面するとみている。高度なソーシャルエンジニアリング技術やmacOSプラットフォームへの標的型攻撃など、洗練された手口が用いられる可能性があるという。
金銭を目的とするサイバー脅威は持続的で強力であるため、2018年にカスペルスキーが発表した強い金銭的動機を持つ「Roaming Mantis」グループの攻撃活動や、インターネット上の様々なサービスを装ったフィッシングサイトを使用した攻撃、モバイルバンキング型トロイの木馬を使用した攻撃などが引き続き活発に行われると同社では見込んでいる。
【関連記事】
・Kaspersky、iOSデバイスを標的としたモバイルAPT攻撃活動調査の詳細を発表
・Kaspersky、東欧の製造業へのサイバー攻撃を調査 クラウドインフラ利用した3つの攻撃段階を発見
・3つの新たなマルウェアの感染手法をKasperskyが発見 貨物船の運航会社も標的に