NTTデータ経営研究所は、「NTTコム リサーチ」登録モニターを対象に「企業・団体等のPMO導入に関する実態調査」を実施し、その結果を発表した。
同調査では、企業・団体などのシステム開発プロジェクトにおけるPMOの導入状況や導入時におけるPMOの業務内容などについて、プロジェクト成否との関係性を分析。また、PMOに対する企業・団体などの評価や期待などを通じて、今後システム開発プロジェクトを成功に導くためのPMOのあるべき姿について明らかにしたという。
調査概要
- 調査期間:2023年11月17~21日
- 調査方法:非公開型インターネットアンケート(NTTコム リサーチ クローズド調査)
- 調査対象:企業・団体などにおいてシステム開発に携わったことがある人
- 有効回答者数:1,008人
企業・団体のシステム開発プロジェクトの成否は、「納期・スケジュール」「品質」「費用」それぞれの領域に共通して「計画策定」が鍵を握っている
企業・団体のシステム開発プロジェクトにおける納期・スケジュール面での成否理由について調査した結果、成功時の要因としては「計画段階における工程定義内容」が38.1%で最多であり、次いで「計画段階における稼働日を含むマイルストンの設定が適切だった」が33.5%だった。
また、失敗時の要因としては、「計画段階における工程定義内容が適切ではなかった」が34.0%で最多、次いで「計画段階におけるマスタースケジュールの内容が適切ではなかった」が29.2%となり、納期・スケジュール面においては、プロジェクトの成功、失敗ともにプロジェクト開始時の計画に起因する要因が多く選ばれる結果となった。
また、品質面・費用面でも成否理由を調査したところ、品質面では「ドキュメント品質の分析に係る手法やプロセス等の品質管理計画」や「ドキュメントのレビュー実施に係る観点、対象、体制等の品質管理計画」が、費用面では「プロジェクトの見積もり」に関わる回答とともに「変更管理の計画」に関する回答が成否ともに上位を占めた。
これらの結果から、システム開発プロジェクトの成否においては、「計画策定」時にスケジュールやマイルストン、工程定義などを明確にすること、レビューや分析などに関わる品質管理計画を適切に定めること、見積もりに加え変更管理方法を適切に定めることが鍵を握っていると示唆されたという。
PMOを導入した企業・団体はそのPMOの有用性を認識しており、良いと評価したPMOが携わったプロジェクトは7割以上が成功している
システム開発プロジェクトにおいてPMOを導入し良いと評価した場合では、7割から8割程度はプロジェクトが計画通り完了、もしくは計画よりも良い結果となったと回答。一方でPMOを導入し悪いと評価した場合では、6割前後がプロジェクトが計画より悪い結果となったと回答した。
特に「納期・スケジュール」「品質」については、プロジェクトの成功(計画の達成度合い)においてPMOの果たす役割は高いものと見受けられる。一方で、費用面に関しては、PMOの評価が良い場合であっても、プロジェクトの成功割合(計画の達成度合い)はやや下回る結果となった。プロジェクトの成功に寄与する上で、PMOとしては、進捗管理や品質管理に加え、費用面への配慮を行っていく上でも、変更管理などの計画および実行のスキルを具備していくことが求められるという。
プロジェクトマネジメント全般において、PMOの役割として特に重視されているのは、計画策定や重要局面での判断を支援する「プロジェクト参謀」である
導入したPMOを良いと評価した場合の要因としては「プロジェクトのゴールを見据え、プロジェクト全体を俯瞰し、プロジェクト責任者と同じ目線でマネジメントが行えた」が54.0%で最多であり、次いで「プロジェクト状況をタイムリーかつ正確に把握することを意識して行動できていた」が47.1%だった。
また、悪いと評価した要因としては、「プロジェクトのゴールや、プロジェクト全体を俯瞰する視野など、プロジェクト責任者と同様の目線を有していなかった」が36.8%で最多、次いで「プロジェクト全体に対してクリティカルな課題・リスクを早期に検知し積極的な拾い上げ、解決に向けたファシリテート」が31.6%となった。
つまり、PMOを良いと評価する要因としては、プロジェクト参謀としての「目線」や「役割意識」が挙げられ、反対に悪いと評価する要因としても、プロジェクト参謀としての「目線」や「役割意識」の欠如が挙げられる。このことから、PMOとしては、プロジェクトオーナーやプロジェクトマネージャーに寄り添いながら、同等もしくはそれ以上の目線をもち、プロジェクトの状況を的確に把握し迅速に是正措置を行っていくことが特に重視されているとしている。
これまでの結果から、企業・団体のシステム開発プロジェクトにおいて期待されるPMOとは、「プロジェクトオーナーやプロジェクトマネージャーの目線や役割」を兼ね備えたものであることがわかった。つまり、プロジェクトの円滑な推進に必要となる計画策定や実行中における課題・リスクに対する適切な対処・意思決定を支援することが求められており、プロジェクト上位職における参謀役としての期待の表れといえる。
今後のPMOへの期待
企業・団体において、今後のPMOサービスに期待することを確認した結果、「システム開発に資する技術的なサポートの提供」が38.7%で最多であり、次いで「自組織メンバーのプロジェクトマネジメント力の向上に向けた教育の提供」が37.0%となった。
今後、プロジェクトを取り巻く環境の変化や新しい技術・開発手法の導入などにより、課題やリスクが多様化し、プロジェクトの難易度が高くなっていくものと考えられる。そのような背景の下、PMOとしては、未知の課題やリスクに係る対応力の強化、自組織の技術力・プロジェクトマネジメント力の向上に資する存在であることが求められていくと同社はみている。
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