
2018年に経済産業省が発表した『DXレポート』では、2025年までにDXを実現できなければ、日本企業は世界の経済競争に後れを取り、多大な経済損失を招くと警告されている。いわゆる「2025年の崖」を目前にして、既存システムの信頼性を活かしながらも、新しい技術と融合し、新たな価値を創造する“DX”が求められている状況だ。そうした課題感の下、2024年11月20日、マイクロフォーカスは、東京ミッドタウン六本木にて「モダナイゼーションフォーラム2024」を開催した。本稿では、複雑な要件にもかかわらず約1年間でリホストした、みずほリサーチ&テクノロジーズの事例講演を紹介する。
メインフレームをオープン化、システムのモダナイゼーションへ
リサーチコンサルティングやR&Dなどの領域に強みをもち、幅広い分野でソリューションを提供する、みずほリサーチ&テクノロジーズ(以下、MHRT)。長期間、業務システムを支えてきたメインフレームを擁するデータセンターの統廃合にともない、約1年に及ぶ大掛かりな移転を実施した。
このレガシーマイグレーションにおける課題は大きく4つ。まず、1つ目はデータセンターの統廃合において閉鎖期限があり、接続先システムが受ける影響に配慮しつつもスピードが求められたこと。2つ目は、メインフレームおよび周辺機器の保守期限が迫り、老朽化などで見直しが必要なものもあったこと。3つ目に運用コストの高騰やJobの手動実行の解消、そして4つ目にはメインフレームの経験者・有識者の不足があった。
プロジェクトの立ち上げからリリースまでを担当した岡田氏は、「システムを新基盤・新言語で作り直すには、仕様をひも解く必要があったものの設計書は紙のみ。また、メインフレームの人材育成にもためらいがあった」と振り返る。そこで議論した結果、メインフレームのオープン化を基本方針として、2つのサブシステムをオープン環境に移転することを決定。一方、システムは機能追加や改修を重ねていたことから、プログラム言語はCOBOLやPL/Iなど多様化し、メインフレームには新旧のシステムがつながっている複雑な状態だった。
マイグレーションにおいては、移転先である新しいデータセンターのプライベートクラウドにWindows Serverで環境を構築。Rocketエンタープライズ製品を用いて、メインフレームのオープン化を図っている。あわせてシステム運用機能の改善にも取り組んでおり、JP1におけるJob実行を自動化。さらにCMT磁気テープを廃止してDVDに統一、帳票の電子化や印刷発送業務のアウトソーシングによってドットインパクトプリンターも廃止した。なお、データエントリー機能は分散システムの機能へと取り込むことで、シンプルなシステム構成を目指している。

プロジェクトを振り返り、岡田氏は「厳しい期限の中、レガシーシステムの更改にとどまらず、『業務システムの最適化』まで追求できた」と語る。今回、パートナーであるキヤノンITソリューションズ(以下、キヤノンITS)の協力が大きかったとして、オープン化にともなうシステム開発に注力できたこともあり「最適化に集中でき、よい判断だった」と評した。
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伊藤真美(イトウ マミ)
フリーランスのエディター&ライター。もともとは絵本の編集からスタートし、雑誌、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ビジネスやIT系を中心に、カタログやWebサイト、広報誌まで、メディアを問わずコンテンツディレクションを行っている。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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