BizOps人材に求められる資質とスキルセット
BizOpsを成功させるためには、適切な人材を採用し、そのスキルを育成することが重要だ。しかし、この領域はまだ新しく、必要な役割やスキルセットが明確化されていないことも多い。パネルディスカッションでは、3名の登壇者がそれぞれの経験から「どのような人材が求められるのか」「どんなスキルが必要なのか」について議論した。
寺出氏は、新卒や中途採用だけでなく、社内でポテンシャルのある人材を発掘しながら組織を構築してきたと語った。その際に重視したのは、「スタンス」と「ビジネスリテラシー」だと言う。
「テクニカルスキルは後から学べばいいんです。それよりも会社の価値観や事業全体を見る視点を持っているかどうかが重要。例えば営業やインサイドセールスなど、これまで関わってきた業務や事業全体について振り返り、自分なりに考えた経験があるかどうかを確認します」(寺出氏)
一方で祖川氏は、自社では4つの要素──事業型、技術型、安定志向、変化志向──に基づいて候補者を分類し、それぞれに適した配置を行っていると説明した。また、「カルチャーフィット」も非常に重視していると言う。
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「素直で能動的に動ける人が最適です。事業課題を自らつかみに行く姿勢がないと、この領域では成功できません。テクニカルスキルは後から身につきますが、そのスタンスだけは持っていてほしいですね」(祖川氏)
荒井氏もまた、「ストレス耐性」と「柔軟性」を最優先事項として挙げた。「BizOpsでは不合理な状況や意見が通らない場面にも直面します。その際にも腐らずコミュニケーションできる力が必要です。それ以外は入社後に何とかなります」と強調した。
BizOps成功の鍵:「シンプルさ」と「前進主義」
パネルディスカッションでは、それぞれ異なる背景ながら共通して語られた教訓として、「短期的メリット提示」「標準機能重視」「シンプルさへの回帰」の3つが挙げられた。
新しい仕組みへの移行には現場から抵抗感が生まれる。そのため、「この仕組みならもっと楽になる」と思わせる短期的メリット(例えば作業時間削減)を伝えることが重要だ。また、高度なカスタマイズよりも標準機能で最大限効果を引き出すことによってメンテナンスコスト削減につながり、運用負荷も軽減される。そして何より大切なのは、「完璧主義より前進主義」で粘り強く進む姿勢だ。この姿勢こそ、多様な背景にも関わらず彼ら3人それぞれ共通して実践できた理由と言えるだろう。
BizOpsの導入はまだ始まったばかりだ。今回のイベントでは、その可能性にかける参加者たちの熱意がひしひしと伝わってきた。試行錯誤を重ねながらも、粘り強く取り組むことで確実に成果へとつながる──こうした議論や交流の場が今後も広がり、BizOpsへの関心はさらに高まっていくだろう。
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