「脱銀行」戦略に基づく業務革新とAIエージェントとの協働

続いて行われた記者説明会に登壇した山本慶氏は、「基調講演の中で語られた将来のAIエージェントとのコラボレーションを前提とする業務は、私たちの業務のやり方を一段階上に上げるためのベースを作っていくことだと考えている」と話す。2017年から、SMBCグループが進めてきた「Intelligent Automation」を掲げたプロジェクトは、RPAなどのテクノロジーを活用したものになる。
当時を振り返り、山本氏は「自分の仕事がなくなるのではないか」という意見を社内でよく聞いたと打ち明けた。この意見に対して、経営陣が言い続けてきたことが、「私たちは変わらなければ生き残れない。それぞれがやりたい仕事は何かを考えよう。少なくとも、目の前のやりたくない仕事を効率化していこう」というものだった。好きか嫌いかを問われたら、大多数の人たちにとって、反復的な仕事は嫌いな仕事に属するはずだ。
2023年11月に亡くなった太田純社長兼グループCEOは、「脱銀行」に向けての強い意欲と実行力を持ち合わせていた人物だ。在任中の太田氏、そして2024年4月に後を引き継いだ中島達氏は一貫して新しいことへの挑戦を奨励してきた。だからこそ、SMBCグループは反復的な仕事を自動化しようと、プロジェクトを進めてきた。 プロジェクトは順風満帆だったわけではない。山本氏が挙げたチャレンジは大きく2つある。
1つは、グループ組織の規模が大きく、標準的な業務のやり方を全社員に浸透させるまでに時間がかかることだ。Fit-to-StandardでERPを導入しても、新しい業務のやり方を説明するだけでは定着しない。それぞれが新しいやり方を理解し、納得し、行動を変えるところまで実現して初めて、変革は成功するからだ。
そしてもう1つのチャレンジが、グループ傘下の企業の業態が多様で、それぞれの相違をERPが吸収させることだ。すでに始まっているグループ展開で特に問題は上がっていないことを鑑み、Oracle Fusion Cloud ERPが変革に伴う痛みを緩和し、グループ共通でのデータ活用ができる仕組みを提供してくれると山本氏は期待を寄せた。