業務プロセスだけでなくビジネスモデルまでゼロベースで見直す静岡銀行、“DX先進金融機関”の理由を探る
既に生成AI活用も、新しいことへの挑戦は「早ければ早いほど良い」

国内の地域金融機関の中でも先進的にDXに取り組んでいる、しずおかフィナンシャルグループ。その中核にあるのが静岡銀行だ。昨今のトレンドである生成AIに関しても、既に様々な実証実験を通じ業務適用を開始しているほか、オープン勘定系システムの開発にもこの技術を適用するべく取り組みを進めているという。なぜ、これほどの柔軟さとスピーディさを体現できているのか。同行でDX推進をけん引する榎本裕己氏に話を伺った。
地域金融機関のあるべき姿を実現するためのDX
2022年4月に静岡銀行が、そして2024年5月にはしずおかフィナンシャルグループが、経済産業省の「DX認定事業者」に認定された。昨今の金融機関においてホットトピックとなっている次世代オープン勘定系システムも、2021年に稼働済みだ。また、デジタル技術を活用した業務改革だけでなく、ビジネスモデルの変革においても数々の成果を出しつつある。各支店における営業活動の場では、既にデータドリブンな意思決定が浸透しつつあるという。
同行のDX推進をリードするのが榎本裕己氏だ。1991年に入行し、支店長や本部の業務企画を経て、2020年からDX戦略を統括している。なお、静岡銀行ではDXが話題になる以前から、バックオフィスの効率化や営業店の負担軽減などといった業務改革には取り組んできた。DXはこうした取り組みの延長線上の位置付けでスタートしたが、現在は銀行だけでなくグループ一体となって変革を推進しているとのことだ。

「銀行ビジネスの最前線は各営業店にありますが、静岡銀行はこれまでバックオフィス業務を集約し、営業店はフロント業務に特化する方針を続けてきました。地域金融機関にとって最も大切にすべきは、お客さまと時間をかけて向き合い、課題を解決することだからです」(榎本氏)

榎本裕己氏
2023年からは、地域共創戦略やグループビジネス戦略の一環として、人口減少や少子高齢化、デジタル社会の形成、産業の発展と金融イノベーションなど7つの重要課題を特定し、DXを活用した解決を模索している。「デジタルは目的ではなく手段」だと強調する榎本氏。顧客接点の変革や営業活動の効率化・生産性向上、データ活用などは手段であり、最終的にはお客さまにより良い価値とサービスを提供することがDXの本質だと述べた。
目標管理制度からOKRへ、組織文化もゼロベースで見直した
DXの推進には、明確な目的が不可欠だと静岡銀行は考えている。そこで2021年9月、業務プロセスをゼロベースで見直し、“顧客視点”で業務プロセスやビジネスモデルを変革すること、さらに地域金融機関として培ったノウハウを地域企業や自治体に還元し、地域全体のIT・DX化を促進することを軸に据えた。
こうした変革への挑戦に前後して、人事制度の見直しも行われた。榎本氏は、「これまでの目標管理制度では、DXのような長期的な取り組みの成果を測るのが難しく、従来の評価の延長線上では目標が設定しにくい課題があった」と当時を振り返る。
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森 英信(モリ ヒデノブ)
就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務とWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業した。編集プロダクション業務では、日本語と英語でのテック関連事例や海外スタートアップのインタビュー、イベントレポートなどの企画・取材・執筆・...
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