経済産業省は、国内のサイバーセキュリティ産業・技術基盤を強化するための包括的な政策パッケージである「サイバーセキュリティ産業振興戦略」を取りまとめたと発表した。
国内におけるサイバーセキュリティ市場においては、ユーザー企業や商流の中心であるシステムインテグレータ(SI事業者)にとって、これまでの利用実績や価格が重視されるため、活用実績のないスタートアップが販路を拡大することが困難であるという。結果として、事業拡大に対する継続的な投資やそれにともなう製品・サービスの競争力の強化が妨げられているといった悪循環に陥っている状況であることが明らかになったとしている。
同戦略では、国内のサイバーセキュリティ産業を振興する意義や我が国サイバーセキュリティ産業の現状を紹介したうえで、上述した悪循環を打破するための包括的な政策対応を提示。同戦略で掲げている主な政策対応は次のとおり。
①スタートアップなどが実績を作りやすくなる/有望な製品・サービスが認知されるための取り組み
- 「スタートアップ技術提案評価方式」などの枠組みを活用し、政府機関などが有望なスタートアップなどの製品・サービスを試行的に活用
- 有望な製品・サービス・企業の情報を集約・リスト化し、政府機関などへ情報展開する/業界団体とも連携して審査・表彰を実施
②有望な技術力・競争力を有する製品・サービスが創出され、発掘されやすくなるための取り組み
- セキュリティ関連の技術・社会課題解決に貢献する技術・事業を発掘するための「コンテスト形式」による懸賞金事業などを実施
- 約300億円の研究開発プロジェクトを推進し、社会実装を後押し
- 国内商流の中心であるSI事業者と国産製品・サービスベンダーとのマッチングの場を創出
③供給力拡大を支える高度人材が充足し、国際市場展開が当たり前になるための取り組み
- 高度専門人材の育成プログラムを拡充/セキュリティ人材のキャリア魅力を向上・発信
- 海外展開を支援/標準化戦略を促進/関係国との企業・人材交流を促進
また、同戦略では、こうした政策対応の結果として期待される今後のロードマップ(来年度における取り組みの具体化を経た、3年以内、5年以内、10年以内の絵姿)も示しており、10年以内には安全保障の確保やデジタル赤字の解消への貢献を実現するとともに、「国内企業の売上高を足元(約0.9兆円)から3倍超(約3兆円超)とする」というKPIも掲げているとのことだ。
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