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EnterpriseZine(エンタープライズジン)

EnterpriseZine編集部が最旬ITトピックの深層に迫る。ここでしか読めない、エンタープライズITの最新トピックをお届けします。

『EnterpriseZine Press』

2026年冬号(EnterpriseZine Press 2026 Winter)特集「AI時代こそ『攻めの経理・攻めのCFO』に転じる」

財務・会計Online Press

金融AIは「使う」から「所有して育てる」へ──NVIDIA、楽天G、NRI、リコーらが実践例を開示

NVIDIA金融AI Meet-up with Macnica(前編)

 2026年4月17日、東京・丸の内の「Global Business Hub Tokyo」で「NVIDIA 金融AI Meet-up with Macnica」が開催された。テーマに掲げたのは「生成AIの自律的進化:データ主権と精度の両立」。楽天グループ、ファーストアカウンティング、野村総合研究所、リコー、大和総研、京都大学、みずほフィナンシャルグループ、KDDIと、金融領域のAI実装を担う8組織が登壇し、自社LLMの構築事例と課題を披露した。前編では、NVIDIAの基調講演と、金融特化LLMの開発に取り組む楽天グループ、ファーストアカウンティング、コンプライアンスチェックの全件自動化を実証した野村総合研究所、現場主導のAI活用基盤を提案するリコーの発表を取り上げる。

NVIDIA:金融のAIは1961年以来の革命

NVIDIA バンキング戦略 グローバル統括 エーサー ブランコ(Aser Blanco)氏

 冒頭のセッションに登壇したのは、NVIDIAでグローバルのバンキング戦略を統括するエーサー・ブランコ(Aser Blanco)氏だ。タイトル「How AI is Shaping the Future of Financial Services」が示す通り、講演は金融業界の構造変化の本質を問い直す内容だった。

 「今日、これだけは覚えて帰ってください。私たちは単なるチップの会社ではありません」。ブランコ氏は冒頭、NVIDIAの本質をこう強調した。同社が提供するのはチップ、ソフトウェア、フレームワーク、モデルが一体となった「AIプラットフォーム」であり、「エクストリーム・コ・デザイン」によってすべてが調和して機能するよう設計されているという。

 AIとは単一チップで良い結果を出すことではなく、数十万規模のチップを統合した「AIファクトリー」という超高性能コンピューターによって、これまで解決できなかった大規模な課題に挑むことだとも強調した。

 金融業界においてAIが「これほどまでに重要な理由」として、ブランコ氏はまず数字を示した。金融業界は世界で年間約1.2兆ドルの利益を生み出す最大の収益産業でありながら、既存プロセスをAIで改善するだけで2,000〜3,000億ドルの増益──つまり業界収益性を20〜30%引き上げることが可能だと語った。

 加えてブランコ氏が指摘したのは不正行為(フラウド)問題だ。不正による業界の損失は毎年1兆ドルを超える。AIによる不正検知をわずかでも改善できれば、その効果は年間数千億ドル規模の価値に直結するとみている。さらに多くの銀行ではITコストの約70%がレガシーシステムの維持に費やされており、AIはその脱却を加速するという。

 NVIDIAが毎年実施する「State of AI in Financial Services」調査(昨年約900名回答)によると99%の回答者がAI投資を継続または拡大すると回答し、89%がAIによる収益向上とコスト削減の両立を実感。そして84%がオープンソースを自社のAI戦略において「非常に重要」と位置づけているという結果だった。

1961年から2025年、そして「インテリジェンス・セントリック銀行」へ

 続いてブランコ氏は銀行の歴史を示し、「AIは1961年以来最大の革命」と位置づけた。その背景には、銀行の心臓部が60年間変わっていないという事実がある。銀行の歴史は紀元前2000年に遡るが、1961年にバークレイズが初のメインフレームを導入したことで「紙セントリック」から「コンピューター・セントリック」へと転換した。そこから現在まで、経営陣がデータセットを見て意思決定するという構造が続いている。

 未来の銀行は紙でもデータセットでもなく、インテリジェンスによって運営される──ブランコ氏はこう展望する。データを変換して得られたインテリジェンスと対話し、それを使って意思決定する「インテリジェンス・セントリック銀行」こそが次の到達点だという位置づけだ。2025年、いくつかの大手銀行が最初のAIファクトリーを購入した。これが1961年のバークレイズによるメインフレーム導入と同じ歴史的転換点になるとブランコ氏はみている。

 AI中心の銀行を構築するアーキテクチャとして提示されたのは「Sovereign Foundations(主権的基盤)」「Proprietary Precision(独自精度)」「Agentic Execution(エージェント実行)」「Intelligence Flywheel(インテリジェンスの好循環)」という4軸だ。

 オープンソースモデルを土台に、自社が40〜60年かけて蓄積したデータでファインチューニングし、業務に特化した多数の小さなモデルを育てる。一度構築したインテリジェンスは不正検知、与信判断、マネーロンダリング対策、次商品推薦と多方面に応用できるという点も強調した。

 具体例として紹介されたのがカナダのRBC(ロイヤル・バンク・オブ・カナダ)の株式リサーチアシスタントだ。アナリストが40時間(丸一週間)をかけていたリサーチレポートの作成が15分に短縮され、一日で投資銀行部門全体の生産量が倍増したという。夜間に12時間かかっていたリスク計算やデリバティブ価格設定も、GPUによって1時間に圧縮できる。「自由になった時間が、新たなビジネスチャンスを探る思考を生む」──ブランコ氏はこう指摘した。

 オープンソースモデルへのコミットメントについても強調した。NVIDIAは医療、自動運転、ロボット、エージェントAIなど多分野のモデルを開発し、オープンソースで公開し続けている。学習データ・重みを含む完全な権利をユーザーに帰属させ、NVIDIA側は一切の権利を主張しない──それが「最もオープンなライセンス」だと説明した。

 「AIのイノベーションはオープンソースの上でこそ花開く。金融では特に、自分たちでコントロールできるインテリジェンスを構築するためにオープンソースが不可欠だ」と締め括った。

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楽天グループ:金融AIは「使う」から「所有して育てる」へ

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