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財務・会計Online Press

金融AIは「使う」から「所有して育てる」へ──NVIDIA、楽天G、NRI、リコーらが実践例を開示

NVIDIA金融AI Meet-up with Macnica(前編)

野村総合研究所:コスト10分の1、全件チェックで証明した特化型の力

株式会社野村総合研究所 チーフエキスパート, AIソリューション推進部 岡田 智靖氏

 野村総合研究所(NRI)からはAIソリューション推進部チーフエキスパートの岡田智靖氏が登壇し、証券・保険業界のコンプライアンスチェックに特化型LLMを適用した実証事例を発表した。

 岡田氏はまず前提を整理した。汎用モデルは日々進化しているが、特定の狭い領域での要件を考えると、ピンポイントな特化型モデルが必要になる場面が多い。精度が高く、高速かつ低コストで、オンプレミスでも自社管理できる──この3つのメリットを同時に得るために、NRIが採用したのは3段階のパイプラインだ。「Qwen3-14B」などのオープンモデルをベースに選定し、NVIDIAの「NeMo Curator」を使ってウェブデータや専門テキストから金融ドメイン知識を抽出して継続事前学習を行い、さらに合成教師データを使った業務タスク固有の学習へと進む。この成果の一部はGENIACプログラムを通じてHugging Faceで公開している。

 具体的な実証として取り上げたのが、証券・保険業界における営業会話のコンプライアンスチェックだ。たとえば営業担当者が、「絶対損はさせません」や「ここだけの話ですが……」という発言した場合、これらは「断定的判断の提供」に該当する。こうした発言を自動判定する仕組みが特化型モデルが紹介された。

 従来、人間が手作業で確認していたこの業務は、リソースの限界から全件の約5%程度しかランダムサンプリングでチェックできていなかった。1件あたり30分ほどかかっていた。

 特化型モデルを導入した結果、AIが一次チェックを担うことでカバレッジは100%全件に拡大し、不備の可能性があるものだけを人間が最終確認するフローに変えたことで確認時間も3分の1に短縮された。

 さらに注目すべきはコストだ。GPT-4oのAPIと比較して、特化型モデルをオンプレミス等で運用することでコストを約9割削減、GPT-5.2比で10分の1以下に抑えることができた。

 岡田氏は、特化型モデルこそが、特定の専門業務において汎用モデルを凌駕する精度を出しながら、圧倒的なコストパフォーマンスを実現できる解決策だという。

 今後は資産運用や銀行業務など他部門へも展開し、AIエージェント化を進める方針を示した。NRIはNRI金融AIプラットフォーム「YUIAI」をはじめ、金融向けAIサービス全体とのシナジーで特化型LLMを活用していく構想を描いている。

リコー:Difyとオンプレ基盤で「キーパーソン」が動かすAI

株式会社リコー AIサービス事業本部 AI事業開発センター ビジネス企画室 岡本 敏弘氏

 リコーのAIサービス事業本部AI事業開発センターでビジネス企画を担う岡本敏弘氏は、オンプレミスGPUサーバーとオープンソースの業務アプリ開発環境「Dify(ディファイ)」、リコー製LLMをセットにしたパッケージについて発表した。

 岡本氏は、情報の機密性が高く、業務プロセスに深く入り込む領域ほど、オンプレミスの役割が際立つと説明した。クラウドと異なり従量課金が発生しない点もメリットだが、リコーが最も重視するのは「インフラの深い知識がなくとも業務に詳しい人材が扱えること」だ。

 このパッケージが狙う利用者像を「キーパーソン」と表現しており、業務への理解があり、かつITにある程度明るい人物が最低限の検証環境から始め、チーム、組織へと広げていく展開を支援したいとした。

 Difyはノードを並べて線でつなぐ視覚的な操作で業務アプリを構築でき、LLMの使い分けも容易だ。デモ事例として、NVIDIAのNemotronを使ったメール内の個人情報マスキング(軽量モデルでも高速・正確に動作)や、kintoneとの連携による営業メモの自動要約・CRM登録、社内ストレージの画像ファイルを読み込んでの解析といった活用場面が紹介された。

 地方銀行・信用金庫向けには、スキャンした事業性評価シート(5枚の画像)をAIが読み取り、テンプレートを指定すると不足情報をAIが対話で補いながら融資稟議書の下書きを自動作成するサンプルアプリも開発している。

 2025年10月には、GENIACプログラムに参画してQwen2-32BをベースにGPT-4相当のベンチマーク結果を示す金融特化マルチモーダルモデルをリリース済みだ。 最近追加したNVIDIA「DGX Spark」のOEMモデルを活用したラインナップでは、研究用途から100名規模の業務活用まで幅広い構成を揃えた。

 岡本氏によれば「環境構築でつまずきがちな部分をスキップして、すぐに業務アプリ作りから始めていただける商品」だという。

 後編では、大和総研、京都大学、みずほフィナンシャルグループ、KDDIの発表を取り上げる。

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