「高年齢者雇用安定法の改正」控える中、歯止めかからぬ人材不足
まずは簡単に転職市場の動向をおさらいしましょう。
最新のdodaにおける転職求人倍率(以下、doda転職求人倍率)は、2.46倍[1]。dodaの登録会員においては、転職希望者1人に対して2件以上の“中途採用の求人”がある計算です。つまり転職市場は今、「超売り手市場」と言えるでしょう。

職種別に見てみると「エンジニア(IT・通信)」が11.41倍で「その他」を除く、全11職種で唯一の10倍超え。IT人材不足の深刻さが見てとれます。
また業種別に見てみると、7.86倍の「人材サービス」と7.10倍の「IT・通信」が際立っています。「人材サービス」については、多くの企業でデジタル化やDXが急ピッチで進み、IT戦略コンサルタントや技術系アウトソーシング企業におけるエンジニア需要がますます高まっているためです。

[1] 『doda転職求人倍率2025年2月版』(2025年3月19日、パーソルキャリア株式会社)
労働力として活躍が期待される「ミドルシニア」
人材不足により、倒産企業が過去最多[2]を記録。外国人労働者数も過去最高[3]を更新する中、人材難の救世主として今注目が集まっているのが経験豊富なミドルシニアです。国だけでなく企業もさまざまな策を講じ、彼らの活躍を後押ししようとしています。
特に2025年4月からは高年齢者雇用安定法の改正により、企業には“希望するすべての社員を65歳まで雇用する”ことが義務付けられます。厚生労働省が発表した令和6年「高年齢者雇用状況等報告」[4]によると、2024年6月時点で65歳以上を定年とした企業は、定年制を撤廃した企業も含めると32.6%(+1.8pt)。70 歳までに対して、高年齢者就業確保措置[5]を実施した企業は 31.9%(+2.2pt)に上っています。今後ミドルシニアに働き続けてもらうためにも定年をさらに伸ばす企業や、定年制を廃止する企業もますます増えていくでしょう。
また、2024年に幾度となくニュースになっていたのでご存じの方も多いと思いますが、役職定年を撤廃する企業の動きも目立ちます。
経団連が会員企業を対象に行った調査[6]では、役職定年制を導入している企業は41.1%、導入していない企業は58.5%(うち、廃止した企業は11.5%)と、役職定年を設けていない企業が半数以上を占める結果に。導入している企業についても、19.3%が見直し・撤廃の予定ありと回答しています。
dodaでも、中途採用の求人票内に「役職定年廃止」「役職定年なし」(ナシ・無などの表記ゆれ含む)のいずれかが含まれる求人が顕著に伸びています。以下のグラフからもわかるように2019年を起点とした場合、2022年頃から急激に伸び始め、2024年には44.6倍[7]に。これは社員により長く働いてもらうためだけでなく、中途採用における自社のアピールポイントの1つとしても活用していると解釈できます。ミドルシニアをつなぎ留める、または新たに迎え入れる手段の1つとして、役職定年撤廃の動きも今後さらに広まっていくでしょう。

[2] 『人手不足倒産の動向調査(2024年)』(2025年1月9日、株式会社帝国データバンク)
[3] 『「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和6年10月末時点)』(2025年1月31日、厚生労働省)
[4] 『令和6年「高年齢者雇用状況等報告」』(2024年12月20日、厚生労働省)
[5] 定年を65歳未満に定めている事業主は、雇用する高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するために、定年制の廃止、定年の引上げ、継続雇用制度の導入のいずれかの措置を講じなければならない
[6] 『2023年人事・労務に関するトップ・マネジメント調査結果』(2024年1月16日、日本経済団体連合会、PDF形式)
[7] 転職サービス「doda」における数値