SAS Instituteは、AIの利用状況、影響、信頼性に関する最新調査『Data and AI Impact Report: The Trust Imperative(データとAIのインパクトレポート:信頼のための必須事項)』を発表した。
同レポートでは、AI導入の現状、ビジネス価値、信頼性、ガバナンス、データ基盤など、AI活用に不可欠な要素を多角的に分析。また、日本企業におけるAI導入・活用の現状と課題を検証し、「日本は戦略的整合性と人材育成の両面で急速に成熟を遂げ、アジア太平洋地域におけるAIリーダーの一国である」ことを明らかにしているという。
日本企業のAI成熟度、世界平均を上回る水準に
日本企業のAI導入は、生成AI・従来型AI・インテリジェントエージェントの活用拡大により急速に進展しているとのことだ。
- 約55%の企業が高度に統合されたAI機能を保有(世界平均:27.9%)
- 13%がAIによる完全な業務変革を実現(世界平均:10.4%)
- 約54%が高度なデータ基盤を整備(世界平均:36.1%)
こうした進展を支えるのは、AI対応のデータセンターやネットワーク、IaaS(Infrastructure as a Service)への積極的な投資であり、日本はデータインフラ整備においてアジア太平洋地域をリードしているという。プライベートクラウドやソブリンクラウドの利用も加速し、AIとクラウドの相乗効果がビジネス変革を支えているとのことだ。
信頼性とガバナンスを重視した「安定的なAI導入」
日本企業の「信頼できるAI」への投資割合は27%で、世界平均(25%)を上回っているという。また、多くの企業がセンター・オブ・エクセレンス(CoE)を設置し、AI戦略を経営目標と連携させる体制を整備しているとのことだ。コストや取り組みの断片化といった課題はあるものの、クラウド市場の急成長がAIイノベーションの拡大を支え、日本のリーダーシップを強化していると述べられている。
AIを「事業レジリエンス強化」の手段として活用
リスクに対して慎重な文化を持つ日本企業にとって、AIは事業レジリエンス(回復力)のツールとして導入が進んでいるとのことだ。またイノベーションをはじめ、競争力を高める戦略的ツールとしても位置づけられているという。
AI導入の主要目的(上位3項目)
- ビジネスリスクの軽減:46%
- 業務効率化:45%
- 利益増:40%
強固なAI基盤の構築:着実で拡張性のあるAI導入への道筋
日本企業は変化の速い技術環境に対応するため、統合型AIプラットフォームの構築を進めているという。統合型AIプラットフォームはデータアーキテクチャと連携し、大規模データを効率的に処理して実用的なインサイトを導き出す堅固な基盤を形成しているとのことだ。また、人材不足への対応としてスキル開発投資が進み、産業全体でAI活用の裾野が広がっているとしている。
日本企業が優先するAI運用課題(上位3項目)
- 企業のAI技術アーキテクチャーの構築: 53%
- 企業のAIを支援するデータアーキテクチャーの開発: 47%
- AIのトレーニングとリスキリングの支援: 46%
調査概要
同調査は、北米、中南米、EMEA(Europe, the Middle East and Africa)、アジア太平洋地域における企業を対象に実施したもので、世界全体で2,375名のIT部門およびビジネス部門の意思決定者が回答。対象業種は、銀行、保険、ライフサイエンス、公共部門、製造、小売、通信など。また、米調査会社IDCが調査結果に対する考察を提供しているとのことだ。
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EnterpriseZine編集部(エンタープライズジン ヘンシュウブ)
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