富士通は、同社が開発したAIトラスト技術のライセンスを、イタリアを拠点するAI開発スタートアップであるAKOS AIに提供した。
AKOS AIは、同技術の活用により開発したAIガバナンスプラットフォーム「AKOS HUB」を、EUのAI規制法に遵守したリスク管理、より一般的なAIガバナンスのサービスとして、2025年4月より企業や団体向けにグローバルに提供を開始したという。
今回、富士通がライセンス提供するAIトラスト技術は、富士通のAIサービス「Fujitsu Kozuchi」のコア技術であるAI公平性技術を含む5つから成り、包括的なAIガバナンスを提供することで、サービス導入に伴うリスクの軽減を可能するとしている。AKOS AIは、これらとAKOS HUB、およびコンサルティングを組み合わせ、企業や団体のリスク軽減・排除を包括的に支援するサービスを提供するとのことだ。

AKOS HUBは、ノーコード/ローコードツールとAIガバナンスのパッケージを提供し、あらゆる規模や分野の組織に対して、公平性、堅牢性の担保とリスク管理を支援するとしている。具体的には、以下のパッケージから構成されているという。
EU AI規制法準拠支援パッケージ
EUのAI規制法が定める、法的義務を明確にするための複雑なプロセスを簡略化するとのことだ。利用者が簡単なアンケートに回答することでAIシステムのリスクレベルを取得し、リスクレベルに対応した法的な義務の履行に必要な行動項目のリストを抽出。抽出結果に応じて、AIシステムがコンプライアンスレポートを作成するという。このパッケージは、Fujitsu Kozuchiのコア技術であるAIコンプライアンス支援技術をもとにしたものだとしている。
なお、AKOS HUBにはこの他にも、AIマネジメントシステムの国際規格であるISO 42001や、米国国立標準技術研究所(NIST)のAIリスクマネジメントフレームワーク(AI RMF)への準拠を支援するパッケージが用意されているとのことだ。
AI倫理影響評価パッケージ
AIシステムの倫理的影響を評価するためのプロセスを構造化したパッケージ。利用者が、AIシステムの開発者やデータ提供者などステークホルダー間の関係を入力すると、EUのAI規制法や過去に発生したAIに関するインシデントレポートを参照し、起こり得るAI倫理リスクをAI倫理影響評価結果として報告するという。このパッケージは、Fujitsu Kozuchiのコア技術であるAI倫理影響評価技術をもとにしたものだとしている。
AIリスク評価パッケージ
AIシステムの企画から運用まで、AIのライフサイクル全体にわたりリスク管理を支援するツール。EUのAI規制などを遵守した証跡や対策の履歴を、プロジェクトごとに必要なアクセス制限をかけて管理し、問題の追跡や監査に活用できるとのことだ。また、ガバナンス部門の責任者は、組織内のすべてのAIプロジェクトの状況を俯瞰的に把握することが可能だとしている。このパッケージは、Fujitsu Kozuchiのコア技術であるAIリスクマネジメントツールをもとにしたものだという。
AI公平性検証パッケージ
データ前処理、学習時、予測時の全フェーズで、AIモデルのバイアスに関わる倫理的な問題に対処するためのパッケージ。中核となる富士通が開発した交差性バイアス検知・緩和アルゴリズムは、性別、年齢、人種など複数の属性に関わる公平性を扱うことが特徴だという。また、公平性と予測精度の評価基準を実装しており、AIの予測精度と多様な公平性のトレードオフをつまびらかにし、最適なモデル選択が可能になるとしている。このパッケージには、Fujitsu Kozuchiのコア技術であるAI公平性技術をもとにしたサービスが含まれているとのことだ。
LLMパッケージ
人間の知識や価値観に関連する様々なトピックに関する、LLM全体のバイアス評価が可能だという。利用者は一般に公開されているLLMや、事前学習あるいはファインチューニングした独自のLLMを評価できるとのこと。このパッケージには、Fujitsu Kozuchiのコア技術であるLLMバイアス診断技術をもとにしたサービスが含まれており、持続可能な開発目標の気候変動、ジェンダー平等、医療、教育の4つのテーマにおけるLLMの回答に含まれるバイアスを診断できるという。ほかにも、OWASPが提供するセキュリティガイドラインに基づく、LLMの評価を可能にするサービスなどが用意されているとのことだ。
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