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SAS Innovate

ITリーダーは生成AIへの「憧れ症候群」に注意せよ──役割と選択肢が増える中で陥る意思決定の罠とは?

単なる「IT担当者」ではなくなったCIO、“コンポジットモデル”でテクノロジーを組織に実装せよ


 AI技術の進化により、企業の意思決定プロセスや組織の在り方が大きく変わろうとしている今、CIOをはじめとするITリーダーが果たすべき務めとは何か。SAS Instituteが米国フロリダ州オーランドで2025年5月に開催した「SAS Innovate 2025」にて、同社CIOのジェイ・アップチャーチ氏が各国メディアのグループインタビューに応じた。CIOやIT部門の変化する役割、AI活用でITリーダーたちが陥りがちな罠、そしてAIを組織に実装し、真に価値をもたらすためのアプローチについて語られた。

最新テクノロジーへの「憧れ症候群」に注意、ITリーダーは特定の技術に囚われるな

 最初にEnterpriseZineに質問の機会が与えられた。そこで、生成AIの活用が当たり前となった時代を生きる「ITリーダーに求められる素養」について、次のように質問を投げかけた。

 生成AIから瞬時にアイデアや洞察、ヒントが得られる時代になった。しかし逆に考えてみると、組織のリーダーはこれまで以上に短いスパンで、かつ膨大な意思決定を下す必要性に迫られるのではという気がする。意思決定を下す「人」が負う責任の重みも増すかもしれない。そこで、意思決定者にはAI時代の新たなマインドセットやスキルが必要になるのではないだろうか。

 すると、アップチャーチ氏は競争優位性の本質から説明を始めた。

 「今日の競争優位性を左右する要素は、大きく2つあると考えています。1つ目は、情報に基づき競合他社と同等以上の速さでビジネス判断を下す能力です。そして2つ目は、他者よりも速く学習することです」(アップチャーチ氏)

 加えて同氏は、「データを活用した意思決定そのものが競争優位性につながる」ことを前提として認識するのが重要だと指摘。データに基づかない意思決定は、企業自身だけでなく、顧客をも危険にさらす可能性があると強調した。

 「今は“不確実性の時代”です。だとすれば、データによってその不確実性をできる限り取り除き、最良の意思決定を導かなければいけません」(アップチャーチ氏)

 この前提を踏まえたうえで、ようやくAI時代のリーダーに必要な素養について議論できるとアップチャーチ氏。同氏はまず、リーダーが果たすべき役割として「責任あるイノベーション」の重要性を挙げた。

 データを活用する以上、そのデータがどこから来たのかを理解する責任がリーダーには求められる。この理解があって初めて、直感ではなく確固たる根拠に基づく意思決定と、その説明が可能になるのだという。

 アップチャーチ氏は、「意思決定とは単線的なプロセスではなく、一つの選択が新たな分岐を生む連続的な流れ」だと捉える。それはまるでツリーのようなイメージだ。そして、一つひとつの分岐の行く先を、正確にシミュレーションすることが重要だ。その中から同じ種類の判断が繰り返される場面を特定し、定型的な意思決定はテクノロジーに任せるべきだと指摘した。

 ここで注意すべき点として、同氏は「新しい技術への憧れ症候群」を挙げた。テクノロジーに興味と理解を持つCIOが陥りやすい罠だ。最新テクノロジーに夢中になりすぎて、ビジネスの目的を見失ってしまうITリーダーが多いのである。

 生成AIは最たる例だ。過去2年間、生成AIはまさに「新しい技術への憧れ」の対象だった。テクノロジーの力を信じる多くの人が、あらゆるビジネス課題を生成AIで解決できると夢を描いたことだろう。しかし、現実は必ずしもそういうわけではなかった。最終的には「人による意思決定」が最も重要であり、生成AIでは解決できない課題もあるというのが、今日のスタンダードである。

 「生成AIは、人々に情報を提供して一定のポイントまで導いてくれます。しかし、実際に決定論的な判断を下すのは生成AIではありません。それには、異なるAI技術が必要となるでしょう」(アップチャーチ氏)

 ここでいう「異なるAI技術」というのは、予測分析や機械学習のことだ。生成AIが得意とするのは創造的な思考や情報の整理・提示であるが、ビジネス上の明確な判断を下す際には、そうした別種のAI技術が適している場合が多い。アップチャーチ氏は、特定の技術に囚われず、課題に応じた適切な選択をすることの重要性を示したのだ。

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CIOの役割が劇的に変化、増える仕事とプレッシャーにどう向き合うか

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この記事の著者

森 英信(モリ ヒデノブ)

就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務とWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業した。編集プロダクション業務では、日本語と英語でのテック関連事例や海外スタートアップのインタビュー、イベントレポートなどの企画・取材・執筆・...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

名須川 楓太(編集部)(ナスカワ フウタ)

サイバーセキュリティ、AI、データ関連技術やルールメイキング動向のほか、それらを活用した業務・ビジネスモデル変革に携わる方に向けた情報を発信します。

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