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システム開発の委託でよくある「準委任契約」の落とし穴、プロジェクト破綻時の責任は誰が負う?

準委任だから完成しなくてもよいのか、提案したのだから完成させるべきか

 この裁判の争点は数多くあるのですが、ここではベンダーの完成責任に焦点を当てて考えてみます。前述した通り、完成責任は契約形態だけで決まるものではありませんが、それでも準委任は準委任です。「ベンダーが完成責任を負う」という合意が明確でなければ、やはり責任は負わず、ベンダー側が損害を賠償する必要はないのかもしれません。

 まして今回は、各工程ごとに個別契約を結んでいます。よって、最終的なシステムが完成していなくとも、各契約は各々全うされていた(製造工程やテスト工程については、どこまで進んでいたかわかりませんが)ので、少なくとも代金がまったく支払われないとか、それ以外の損害賠償を負うといったことはないとの考えがあります。

 一方でユーザー側としては、提案書には稼働時期が明記されており、また、ここまで述べませんでしたがシステム全体の構成図も記載されていることから、「当然、完成まで責任をもって対応するもの」と期待していたことでしょう。

 現実問題として、情報システムの開発においては、どの道「ベンダーが最後まで作るしかない」という考えが根強く、それは請負でも準委任でも変わらないというプロジェクトが多数派ではないかと思います。準委任で完成しない成果物を置いていかれても、ユーザーとしてはどうしようもありません。

 だから準委任にするのは、たとえばアジャイル開発のように成果物の要件が途中で変わってしまうものや、作業内容が途中で変化することが想定されるプロジェクト、あるいは契約に関わる事務手続きが準委任であるほうが容易な場合などであって、「完成しなくてもよい」という意図で準委任にするケースのほうが少ないのではないかと思います。

 とはいえ、本件のように実際システムが完成しなかった場合、その責任をどちらがどうとるのかという問題に発展すれば、やはり準委任であることが大きな問題になります。そして準委任とはいえ、完成を約束させるような取り決めがあったのか、そのあたりを裁判所は見ることになるのですが……さて、どのような判決になったでしょうか。続きを見てみましょう。

東京高等裁判所 令和3年4月21日判決

 本件各契約の内容は、いずれも準委任契約と認められる。(中略)各契約は、あくまでそれぞれの工程に係る契約であって、これらをもって、被告において原告の要望するシステム全体を完成させる義務を負うということはできない。

(中略)

 提案書に記載された稼働時期についても、これはあくまで目標とされていたものであって、被告がその時期までに稼働可能なシステムを完成させる義務を負っていたことを示すものではない。

(中略)

 各契約の内容や締結経緯等を踏まえると、被告が原告に対してシステム全体を完成させる旨の明確な約束をしていたとは認められない。

(出典:裁判所ウェブサイト 事件番号 平成31(ネ)1616)

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提案書だけでは約束にならない

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この記事の著者

細川義洋(ホソカワヨシヒロ)

ITプロセスコンサルタント東京地方裁判所 民事調停委員 IT専門委員1964年神奈川県横浜市生まれ。立教大学経済学部経済学科卒。大学を卒業後、日本電気ソフトウェア㈱ (現 NECソリューションイノベータ㈱)にて金融業向け情報システム及びネットワークシステムの開発・運用に従事した後、2005年より20...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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