
2027年4月から強制適用となる「新リース会計基準」。単なる会計ルールの変更に留まらず、全社的な業務改革とシステム対応が迫られる、この大変革に企業はどう立ち向かうべきか。今回は、システムベンダーとしての立場から支援している専門家にポイントを訊いた。
「新リース会計基準」による企業負担、対応の要点は
2027年4月1日より、多くの日本企業に「新リース会計基準」が強制適用される。これまでオフバランスとして処理できたリース契約の多くが、オンバランスとして貸借対照表(B/S)に計上されることになるこの変更は、財務諸表に大きな影響を与えるだけでなく、経理や財務、事業部門の業務プロセスにまで抜本的な見直しを迫るものであり、近年まれに見る大きな会計制度の変更だ。
この背景には、会計基準の国際的な潮流がある。クラウド会計システム「multibook」を提供し、企業の「IFRS(国際財務報告基準)」対応を支援してきたマルチブックの田村創一氏は、日本の会計基準が置かれていた状況について、次のように話す。
「現在、日本企業に関わる会計基準として、大きく『IFRS』『米国会計基準(US-GAAP)』『日本会計基準(J-GAAP)』の3つが挙げられますが、日本の会計基準はガラパゴス化しており、グローバルの潮流から少し遅れてしまっているのが実情です」(田村氏)

IFRS16/新リースソリューション推進部 部長 田村創一氏
特にリース会計の領域では、その乖離が大きな課題となっていたという。2009年には、日本においてもIFRSの任意適用が可能になっていたことも鑑みると、およそ16年遅れでその基準に追いつく形となる。これは単に会計処理を国際基準にあわせるだけでなく、投資家からの信頼性も高めたい狙いだ。
しかし、対応を迫られる企業にとっては、その実務的な負荷は計り知れない。これまでオフバランス処理が認められていたことで、多くの企業はB/Sをスリムに見せていた。だが、新基準の適用によって、これらのリース契約をオンバランスで計上すると、一時的にB/Sが膨らみ、自己資本比率などの経営指標が悪化してしまう可能性もある。
こうしたインパクトの大きさから、新基準への対応は単なる会計部門のタスクではなく、経営戦略に関わる全社的なプロジェクトとして捉える必要があるだろう。強制適用まで残された時間は1年半を切った。
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岡本 拓也(編集部)(オカモト タクヤ)
1993年福岡県生まれ。京都外国語大学イタリア語学科卒業。ニュースサイトの編集、システム開発、ライターなどを経験し、2020年株式会社翔泳社に入社。ITリーダー向け専門メディア『EnterpriseZine』の編集・企画・運営に携わる。2023年4月、EnterpriseZine編集長就任。
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