金融機関は紙・Excel文化から脱却できるか? 地銀や信金も「データ活用」「内製化」に注視
複雑化する金融システムの課題と対策──4社の視点から “最適解”を探る:ウイングアーク1stの視点
妥協できない可用性は「LifeKeeper」で担保
岡本:金融機関においても「システム内製化」の機運が高まっているのですね。
加茂:たとえば、とある金融機関では、投資信託の紙の帳票をinvoiceAgentが提供する「AI OCR」機能で電子化し、それをinvoiceAgentでチェック・修正を施した上でMotionBoardでモニタリングし、システムに同期する仕組みを内製開発されています。同様のシステム開発を外部委託すると多額のコストが必要ですが、すべて内製化することで大幅にコストを削減できました。
岡本:電子帳票システムやBIなどが連携して業務プロセスを担うようになると、高い可用性を担保する必要がありますよね。金融機関の業務ともなれば、なおさらです。
加茂:前述の例では、invoiceAgentとMotionBoardが停止してしまうと、お客様からの買い付け依頼を当日中に処理できなくなってしまいます。これはいわゆる「証券事故」に該当し、金融機関として重いペナルティを課せられる重大インシデントです。単に行内でデータを分析・可視化するだけならまだしも、お客様の取引に影響を及ぼすような業務にまで活用するとなれば、やはり可用性の担保は欠かせません。

岡本:そうしたニーズに応えるため、サイオステクノロジーのHAクラスターソフトウェア「LifeKeeper」がinvoiceAgentをサポートしていますね。
加茂:2024年10月より、invoiceAgentとLifeKeeperを組み合わせた構成をサイオステクノロジーと正式にサポートしています。これにより万が一、invoiceAgentで構築した電子帳票システムがダウンしてしまったとしても、LifeKeeperによって素早く待機系にフェイルオーバーさせることができ、システムダウンの影響を最小限に留めることができます。帳票基盤ソリューション「SVF」も、2023年7月からLifeKeeperによってサポートされており、多くの金融機関で利用されています。
岡本:LifeKeeperによる冗長構成は、金融機関のユーザーからどのように評価されていますか。
加茂:機能や実績はもちろんのこと、多くのお客様がベンダー同士の連携の有無を非常に気にされています。その点、当社製品とLifeKeeperの組み合わせは、サイオステクノロジーと事前検証して正式にサポートしていますし、連携を実装するために必要な技術情報も公式ドキュメントとして公開しているため、安心してご利用いただいています。
AIを取り込み、さらなる現場ニーズに応えていく
岡本:現在、生成AIをはじめとしたAIが急速に浸透していますね。金融業界における関心も高いと感じますが、この潮流をどのように捉えていますか。
加茂:今後、より深刻化する“人手不足”に対処するためにも、多くの金融機関がAIに大きな期待をかけていますし、既に一部では導入が始まっています。一方でクラウドと同じく、セキュリティやガバナンスの厳しい要件を前に、二の足を踏む金融機関が多いのも事実です。しかし、AIは確実に業務効率化の効果が見込めるだけでなく、データから新たな知見を引き出せるなど、データ活用の可能性も大きく広がりますから、積極的に取り組んでいただきたいですね。
岡本:御社の製品でも、AIを活用されているのでしょうか。
加茂:次期バージョンのMotionBoardでは生成AIを大々的に取り込み、自然言語による指示で画面を開発できる機能を実装予定です。実は、既にいくつかの銀行にはプロトタイプ版を試していただいており、好評を博しています。
岡本:先ほどお話しいただいた内製化のニーズに応えていく上でも、大変有用な機能になりそうですね。
加茂:はい、AIで強化された製品を導入・活用していく上でも、われわれのチームには実際に金融機関の現場で働いていたメンバーが揃っていますから、現場の課題や困りごとを深く理解できます。どうしてもベンダーはシステムの観点からモノを作ってしまうため、現場のニーズと齟齬が生じてしまいます。だからこそ私たちは、金融機関での現場経験を活かしながら、現場のニーズに即したシステムを実現していきたいですね。

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- この記事の著者
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吉村 哲樹(ヨシムラ テツキ)
早稲田大学政治経済学部卒業後、メーカー系システムインテグレーターにてソフトウェア開発に従事。その後、外資系ソフトウェアベンダーでコンサルタント、IT系Webメディアで編集者を務めた後、現在はフリーライターとして活動中。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
提供:サイオステクノロジー株式会社
【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社
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