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地域格差が歴然の自治体DXで大分県が奮闘するワケ──県+18市町村の会議に“潜入”で見えた成功要因

#4:大分県 | 「オール大分」で立ち向かう

丸1日がかりの作業部会への“潜入”を通して感じた「本気度」

 2025年5月、筆者は大分県庁で開催された「令和7年度 第1回 市町村行政DX推進会議 作業部会」にオブザーブ参加した。出席者は全18市町村のデジタル推進課長や課長補佐クラスと、事務局として県庁のデジタル政策課のメンバーである。

 作業部会は13時から15時の2時間であるが、引き続き15時から17時には、同じく推進会議の下部会議体である「人材育成・確保検討部会」も開催。さらに、夜には大分の繁華街でインフォーマルな情報交換会(宴席)までセットされており、移動時間まで含めれば、ほぼ丸一日を本件で費やす参加者もいる。もちろんオンラインで手軽に開催することも考えられるが、「できるだけ対面で会って、顔の見える関係にしておくことも重要です」と吉永氏は言う。

 そして会議が始まった。守秘義務があるので施策の内容には触れられないが、事務局である大分県から次々と説明される資料を見て、筆者は正直言って「スゴイ」と思った。自治体でも民間企業でも、物事を企画する仕事の成果は「資料を見れば分かる」と筆者は考えているが、その日に配布された資料はすべてのページから「大分県全体のDXを推進したい」という意気込みが伝わってきた。

 また、各市町村からの参加者たちも忌憚なく意見を述べ、それに対して「うちではこうやっている」といった他の市町村からの情報提供があるなど建設的に論議が進められていたのだ。10分間の休憩では、その時間すらもったいないとばかり、参加者はお互いに挨拶して談笑したり、情報交換したりしていたのも印象的だった。

 会議全体を通して感じたことは、「オール大分の醸成」と「良い緊張感」である。ただの馴れ合いの場ではなく、皆で本気でDXを進めるんだという県や市町村の熱量が伝わってきた。日本はムダな会議が多いと言われるが、会議にちゃんと魂を込めれば、数時間でこれだけのことができるのだと、筆者も新鮮な気持ちになった。

 たかが会議、されど会議である。これを見れば、ふだんの仕事ぶりや県と市町村の関係などが想像できる。「これなら進捗するはずだ」筆者は納得して帰路に着いた。

県と市町村が一体になった「オール大分」がうまくいく理由

 本稿では、大分県による18市町村のDX支援について取り上げたが、その要因分析を行いたい。

 大分県でこの手法がうまく機能する一つ目の要因は、「市町村の数が少ない」ことである。それにより、先述のような会議の運営が可能となり、顔の見える関係も容易に構築できる。逆に言えば、北海道のように市町村が179と大分県の約10倍もある都道府県では、「皆で集まって論議しよう」という手法は現実的ではない。

 二つ目の要因は、「もともと全市町村で共同して物事を行う文化が根付いていた」(吉永氏談)ことがある。大分県では「豊の国ハイパーネットワーク(情報ハイウェイ)」により県内のネットワークを共同化しており、その基盤を活かしてシステムの共同購入などを進めてきた経緯があるのだ。また、「全市町村で消防指令センターを共同運用する仕組みを全国初で実現するなど、オール大分での取り組みに積極的である。こういった実績の積み重ねが、現在のDX推進にも生かされている」(安部氏談)という。

 三つ目の要因として、「大分市が果たしている役割が大きい」のではないだろうか。大分市は、時事通信社が公表している「全国自治体DX推進度ランキング2023」において全国第2位に輝いたこともある、DXの進捗が良い市である。それゆえ、県内の他の市町村と情報共有を進めることにより、全体の底上げが図れている。県内で最大の市町村であり、18市町村の中で“兄貴分的な存在”のため、その大分市と大分県が一枚岩で連携していることにより、周囲に良い影響を与えているのではないだろうか。

 以上、大分県の要因分析を行ったが、もちろんこれがすべての都道府県でうまくいくとは限らない。市町村の数など、他県ではいかんともしがたい要因である。大切なことは、自分の県に適した手法は何であるかを必死に考え、試行すること。広島県や福島県ではそれがたまたま専門人材プール方式だったのであり、他県では他の適した手法があるはずだ。特に、大都市圏ではない地方の都道府県にあっては、人材確保の面でネガティブな要素があるので、知恵と工夫で乗り切るしか道はない。

 本稿では大分県庁の側から市町村支援の取り組みを記述したが、市町村のDX推進の進捗が良いのは各市町村の努力の賜物であることは言うまでもない。最後に、その点を強調しておきたい。今後も大分県および各市町村の取り組みに期待したいと思う。

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この記事の著者

角田 仁(ツノダ ヒトシ)

1989年に東京海上火災保険に入社。主にIT部門においてIT戦略の企画業務を担当する。2015年からは東京海上のIT企画部参与(部長)および東京海上日動システムズ執行役員。2019年、博士号取得を機に30年間務めた東京海上を退職して大学教員へ転じ、名古屋経済大学教授や千葉工業大学教授を歴任した。現在...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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