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2026年冬号(EnterpriseZine Press 2026 Winter)特集「AI時代こそ『攻めの経理・攻めのCFO』に転じる」

EnterpriseZine Press

規制が厳しい医薬品製造業界で、“偶然”を追い風にAI活用を推進 「バッドインフルエンサー」への対処法

武州製薬が進めた「口コミ」で広めるAI活用浸透までの道筋

苦情には“即対応”しネガキャンを阻止 AI活用浸透の道のり

 3つの偶然に助けられてスタートした生成AI活用は、その後、スピードをもって社内に浸透していく。現在、同社では「JAPAN AI」サービスなどを活用し、生成AIおよびAIエージェントの活用を推進。AIエージェントは自社で内製しており、システム操作方法の案内やメールの翻訳・返信作成といった業務アシスタント領域のエージェントだけでなく、業界特有の専門知識を持ったプロフェッショナル領域のエージェントまで、およそ35個(2026年2月13日時点)に及ぶAIが稼働している。

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 10名からスタートし、2025年8月にはAIのユーザー数が90名に、2026年1月には203名へと増加。月に削減された業務時間は266時間から4,547時間へと跳ね上がった。その裏側には、いったいどんな施策があったのか。

 同社は約1,800名の従業員を抱えているが、全員が電子機器を使用するわけではない。製造現場の中には、日常的な業務にPCを使用しない従業員もいるため、そういった人々はAI活用の対象とはせず、まずは個人にPCが配布されている管理側やデスクワーク中心の社員最大600名をAI活用のターゲットに設定した。

 この600名にAIを普及させるため、各部署にノルマを課すような強制的な展開は行わず、徹底して“口コミ”に頼る戦略をとったという。現状に疑問を持つ最初の10名が自部署でAIを使う姿を見せながら、AI利用の希望者が出てきたら追加で権限を付与することで、ユーザーを徐々に増やしていった。現在は、200名以上の必須アイテムとしてAIを定着させるフェーズにあり、ゆくゆくは600名全員を対象とした強制展開を見据えている。

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 また、AI活用の普及にともない、企業として押さえておかなければいけないことがセキュリティやガバナンスの確保だ。同社は、AI活用が始まった初期段階において、無料版ChatGPTの社内利用に制限をかけた。アップロードしたデータが学習に利用されるなどのセキュリティリスクを重く見たためである。

 代わりに、Microsoft CopilotとJAPAN AIにツールを集約。機密情報を扱うルールについては、システム利用申請時に個人情報や顧客の極秘情報を入力しない旨を同意させるほか、eラーニングを通じて生成AIに関するコンテンツを展開し、ユーザーのリテラシー教育を進めていると上野氏。また、将来的にはAIの利用ログを監視して不適切な単語の入力がないか分析するAIエージェントも稼働させながら、それを匿名で社内に公開することで抑止力とする計画も検討されているとのことだ。

 このような安全性も両立させながらも、現場に積極的なAI活用を根づかせるためのポイントは、「とにかくインパクト」だと上野氏は語る。実際に、AIエージェントには目を引くタイトルをつけ、まずは1回クリックしてもらうことを優先した。

 また、「改善要望ではなく『苦情』をもらうこと」も大事な要素だという。AIを使ってみたユーザーからのネガティブな反応に対しても、心にゆとりをもって「ありがとう」と受け止める。そして、苦情に対しては即時に修正する。苦情を放置すると、「AIは役に立たない」といったネガティブキャンペーンが広まってしまうため、即座に対応することでユーザーが使わざるを得ない状況に巻き込み、改善のサイクルを回していく必要があるとした。

 さらに、利用促進の方程式として同社は「見える化と共有」を徹底しているという。毎月の利用データからダッシュボードを作成し、業務削減時間、アクティブユーザー数、部署別のクレジット使用量、エージェントの利用ランキングなどを全社に公開。また、Teams上にアカウント保持者全員が参加するコミュニティを作成し、活用ネタや失敗談、苦情などを共有できる場を用意し、社内の熱量を高めている。

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AIが責任転嫁のツールに……活用が進んで見えた現状課題

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奥谷 笑子(編集部)(オクヤ エコ)

株式会社翔泳社 EnterpriseZine編集部

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