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経営層はやる気なのにDX人材はなぜ育たない?──四国電力260人を動かした、牽引者の“執念たる気概”

#8:四国電力 総合企画室 DX推進プロジェクト 副リーダー 伏見初美さん

中級人材のその後は? 現場で輝く、DXの勘所と実践の連鎖

 DX人材育成の取り組みは現場でどう生かされているのか。実際に、DX人材認定制度で中級を取得した山口祐亮さんと藤本新市さんに話を聞いた。

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(左から)四国電力送配電株式会社 契約センター徳島分室 山口祐亮さん、

四国電力株式会社 坂出発電所 藤本新市さん

 四国電力送配電の契約センター徳島分室で働く山口さんは、太陽光発電の申し込み受付を担当している。契約書作成は紙の資料が多く、入力・確認項目も煩雑だった。「何か楽にできないか」と考えた末にたどり着いたのが、Excelにマクロを組み込んだ契約書作成ツールの開発だ。マクロの経験はゼロだったが、社内版ChatGPTの「よんでんLUCK」に使い方を教わりながら完成にこぎつけた。社内のAI活用コンテストでは最優秀賞を受賞し、現在は全社展開に向けて動いているという。「職場のメンバーが課題を一緒に見つけてくれた。みんなの協力があったからできた」と山口さんは振り返る。

 四国電力の坂出発電所で働く藤本さんは、中級認定研修のエンジニアコースで機械学習を学んだ。「研修内容がタイムリーで非常に役に立った」と藤本さん。その知識を生かして取り組んだのが、火力発電所における異常予兆検知AIの導入だ。発電設備の運転データをAIに機械学習させ、人の目では捉えきれない異常の予兆を検知するこのシステムは、導入後に5件ほど異常を検知するなど、現場に欠かせないツールになっているという。第1回「BXアワード」では、発電所チームとして大賞を受賞した。

 藤本さんは、「現場とDX推進のかけ橋になりたい」と語る。伏見さんが手渡したバトンは、それぞれの現場で着実につながっているようだ。

宮崎CDO「DXは柔軟体操のよう」楽しむから可能性が見える

 「矢のような催促」に応えて初級を取得した宮崎CDOは、この取り組みをどう見ているのか。「スーパーマンみたいな人が1人だけいても、業務全体はなかなか変わらない」と宮崎さんは言う。デジタルを共通言語として持つ人材が複数いてこそ、変わりやすい土壌ができる。

 自ら初級を取得したのも、その土壌づくりのためだ。「変わりたいと思っても、昔の常識や気持ちの問題が壁になっていることがある。自分が率先して動く姿を見せることで、壁を取っ払いたかった」。他社のCDOとも「土壌を耕す前に『DXの目的は』『成果は』と言い過ぎると、革新的なことは出てこない」という話になるという。DX人材認定制度の認定者が260人を超えた現状には、「私が思っていたより、若い人たちはずっと積極的だった」と語る。

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四国電力株式会社 取締役 常務執行役員 CDO(DX推進責任者)宮崎誠司さん

 「DXは楽しんでやらないとダメ」と宮崎さんは言い切る。「夢みたいなことを普段から言い合っていると、そのうち少しずつ可能性が見えてくる。柔軟体操みたいなものです」。DX人材育成の先に見据えるのは、効率化と新規事業の創出だ。「業務改善で生まれた仕組みが他の会社でも使えるかもしれない。そういう可能性をDXが切り拓いてくれると思っている」。

 「伏見さんには、このまま進んでしまっていいのかなんて考えずに、どんどん突き進んでほしい」と期待を込める。伏見さんは「それは得意かな」と笑顔で応えた。

取材後記:人が好きだから、止まっていられない

 「人が好きなんです」。人材育成のモチベーションを尋ねると、伏見さんは迷わずそう答えた。プライベートでも医療ボランティアに参加するなど、誰かが喜ぶ姿、成長する姿に力をもらっているという。

 秋に開催した肝入りのトヨタ自動車との研修ツアー後の休日は、あまりに気合を入れて取り組んだあまり、疲れ果てて寝込んだそうだ。布団にくるまりながら一瞬、「いつも全力疾走しすぎかな、さすがにもういいや」とよぎったものの、みんなの目の輝きを思い出すと、もう次の企画が頭の中で走り出していたという。

 「ちょっと背中を押したり、チャレンジできる機会をお渡ししたら、人はどんどんこれまでの自分を越えていける。その瞬間が見たいんです」と伏見さん。DXに命を吹き込むのは人だ。ただ、伏見さんを見ていると、「人っていうより愛だ」と思った。

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この記事の著者

酒井 真弓(サカイ マユミ)

ノンフィクションライター。アイティメディア(株)で情報システム部を経て、エンタープライズIT領域において年間60ほどのイベントを企画。2018年、フリーに転向。現在は記者、広報、イベント企画、マネージャーとして、行政から民間まで幅広く記事執筆、企画運営に奔走している。日本初となるGoogle C...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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