JTの医薬事業を継承した新生SHIONOGI、新薬開発期間の大幅短縮を実現した「AI高速創薬モデル」とは?
「SHIONOGI DATA SCIENCE FES 2026」レポート#01
創薬期間の大幅短縮で用いたアプローチ
また、創薬期間短縮では、データ活用も戦略的に重視した。化合物の探索は段階的に行った。最初のバーチャルスクリーニングは、バーチャル化合物をターゲットに行うものであり、塩野義製薬が蓄積してきた化合物ライブラリーをソースにスクリーニングを実施した。この結果、得られた320個のバーチャルヒット化合物に対し、実験で評価するリアルスクリーニングを実施した。最終的にヒットしたリアルのヒット化合物は数こそ少ないものの、複数の獲得に成功できたという。
有望なヒット化合物を獲得できたのとほぼ同時期、並行して実施していた前述のX線複合体の構造解析の結果も得られた。「この構造情報がなければ、今回の高速創薬は実現できなかったと断言できる。非常に良好な薬物動態を示すヒット化合物を獲得できたこと、加えて3CLプロテアーゼの構造解析結果を得て、『これはいけるんじゃないか?』という手応えを得たことを覚えている」と立花氏は振り返った。では、どのようにしてヒット化合物から新薬を創出したか。複合体構造情報から、このヒット化合物のポテンシャルは確認できたが、活性を数百倍上げなければならない。そのためのデザインが必要になった。複合体構造情報を活用した上で仮説を設定し、データドリブンでの最適化を繰り返すことで、4ヵ月間で600倍の活性向上に成功した。
探索研究を開始したのが2020年6月頃。その後、13ヵ月間で臨床試験まで到達。通常であれば5〜6年かかるところを5分の1程度にまで短縮できたことになる。さらに、2022年11月に日本における緊急承認、2024年3月に通常承認を取得した。立花氏は「コロナ禍という特殊な環境ではあったが、この経験から得た知見は一般の創薬にも適用できる。現在、標準実装を進めている」と締め括った。
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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...
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