「データを整えるだけ」の常識は通用しない BI時代から脱却する、AI時代のデータガバナンス
【第1回】生成AI時代、データガバナンスはどう再設計されるべきか
変わらない原則、再設計すべき領域
生成AIの登場にともない、データガバナンスに関する考え方をどのようにアップデートしなければならないのか。まず重要なことは、「何が不変で、何を見直すべきか」を切り分けることだ。
まず、不変の原則として残るものは明確である。誰がどのデータに責任を持つのかという責任の所在、業務で利用するデータの品質確保、機密情報や個人情報を守るアクセス管理、法令や社内ルールの順守、そして後から説明・検証できる監査可能性である。これらは、生成AI以前からデータ活用の土台であり、これは今後も変わらない。
一方で、生成AI時代にあわせて再設計すべき領域もある。代表的なのは、出力結果の評価、入出力の統制、回答根拠の明示、参照データの鮮度管理、人による確認の設計、そしてログ取得の在り方だと考える。
たとえば、正しい文書を格納しているだけでは十分ではない。生成AIがどの文書を参照し、どのような条件で回答したのかがわからなければ、誤回答が生成されても原因を追えない。また、古い規程や更新漏れのある資料を参照していれば、AIは整った文章で誤った内容を返してしまう。
つまり、従来のデータガバナンスが「データをどう整えるか」を中心にしていたのに対し、生成AI時代には「整えたデータがAIにどう使われ、どのような形で業務判断に影響するか」までを管理しなければならない。
また、ここで重要なのは、生成AIの課題は“AIツールだけの問題”ではないということである。実際には、データの定義が曖昧、最新版がわからない、権限設計が不十分といった、従来から存在していたデータマネジメント上の課題が、生成AIによって表面化しているケースが多い。言い換えれば、生成AIは新しい問題を持ち込むだけでなく、既存の管理不備を可視化する装置でもある。ここに再設計の本質がある。
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小林 靖典(コバヤシ ヤスノリ)
ショーリ・ストラテジー&コンサルティング株式会社 ディレクター国内大手コンサルティングファームにて、データマネジメント・コンサルティングチームの立ち上げを主導。現在はショーリ・ストラテジー&コンサルティングにてデータ領域の専門チームを率い、データドリブン推進、AI導入支援、データマネジメント/データガバナンス領域のサービスを提供。データ領域のコンサルタントとして十数年以上にわたり、製造業(自動車、電機、機械、化学、食品)を中心に、小売業、通信サービス、金融・保険業、製薬...
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