IVI、日本発の製造業PLM標準「Lean PLM」技術仕様を公開──23社が7,000件超のデータを体系化
「IVI公開シンポジウム2026-Spring」レポート
一般社団法人インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI)は2026年3月12日、東京・機械振興会館で「IVI公開シンポジウム2026-Spring」を開催した。目玉となったのは、製造業PLM(製品ライフサイクル管理)の技術仕様「Lean PLM(L-PLM)」のパブリックレビュー版の初公開だ。IVI理事長の西岡靖之氏がデータ競争力の本質を問う大局論を展開し、製造業PLMタスクフォース主査の西村栄昭氏が技術仕様の詳細と今後のロードマップを解説した。マツダ、デンソー、安川電機など製造業・ITベンダー・コンサルファームを横断した23社が参加して作り上げた「日本発の製造業PLM標準」は、産業界への重要な問いかけとなった。
IVI西岡理事長:「造りすぎ」の罪を、ソフトウェアに問う
IVI理事長の西岡氏の「製造業PLMが日本を変える!~日の丸デジタル部隊の進撃予告」と題した講演で、同氏はまずトヨタ生産方式の産みの親・大野耐一の言葉を引いた。「低成長期において造りすぎは罪悪である」──これをソフトウェアの世界に転じ、「ソフトウェアにおいて造りすぎは罪悪である」というIVIオピニオンとして提起した。
製造業では、システム開発コストが人件費として大きな負担になっているのが現実だ。西岡氏は「ソフトウェアにはお金がかかるが、作ること自体に価値があるわけではない」と語り、Lean PLMの議論もまさにこの課題意識から始まったと説明した。
続けて西岡氏は、コンピューターの歴史を軸にした流れを説明した。ハードウェアとソフトウェアが分離したのが1970年代。さらにソフトウェアの内部でアルゴリズムとデータが分離可能になったのが2000年代。そして2025年以降の現在は、AIによるプログラムの生成の時代となる。「ChatGPTやGeminiと会話しながら、学生でも信じられないクオリティのソフトウェアを作ってくる」と西岡氏は述べる。
では、こうした時代に何が競争力の源泉になるのか。「データだ」と西岡氏は断言する。ただし、ここに氏の独自論が加わる。「データには2種類ある。交換するデータと、秘匿すべきデータだ」というのだ。オープンデータ礼賛の風潮に一石を投じ、「なんでも見せる」でも「なんでも隠す」でもない、意図的な仕分けこそが経営競争力を左右すると論じる。「取引先を増やし成長機会につながるデータを開示し、自社の強みを引き出す差別化データを秘匿する。この切り分けができる会社とできない会社が、これからの競争の優劣を決める」——そう西岡氏は言う。
関係者からは顰蹙かもしれない、と前置きしつつも、西岡氏は「競争が存在しない世界には成長も存在しない。データを隠すことも重要だ」と述べた。AIはこれからみんなが使うのだから差別化の要因にはなりにくく、AIを使って何をするか、つまりデータをどう仕分けして取得するかが価値の源になるという問題提起だった。
そしてここから製造業PLMへの伏線がつながる。「デジタル化のゴールは自動化ではない。共通化と差別化の明示的な切り分けによる競争力の強化だ」──西岡氏はそう断言した。問題はデータをデジタル化しても、現実には公開・開示・秘匿の区別ができていないことだ。いったんデータベースにドカンと入ってしまうと、何が入っているかわからなくなる。そこで必要になるのがデータの「整理棚」だ。BOM(Bill of Materials:部品表)、BOP(Bill of Process:工程表)、BOA(Bill of Assets:資産表)といった構造的なデータモデルが、その役割を果たすということだ。
西岡氏はまた、「製造現場こそが設計とマーケットの交差点」という立場から、生産技術を起点とするPLMの有効性を説いた。設計側からのフロントローディングはうまくいかないことが実証済みだとして、工場起点で設計変更も現場で判断できる体制が効率的だと説明した。Lean PLMは、この「リーンなものづくり」の考え方を製品ライフサイクル全体に適用する仕様として紹介された。
セッションの締めくくりに西岡氏は、IVIが目指す2050年の産業構造を示した。Connected(アジャイル工場)、Aggregated(シェアリング工場)、Distributed(コンビニ工場)に加え、Circulated(リボーン工場)という循環型の軸を新たに加えた4象限モデルだ。「リーンPLMとサーキュラーPLMが連携することが、おそらく未来の製造業の形になる」と展望を示し、マスターデータを活用しながら人と現場の力を結集して新しい方向に向かうための「最初の突破口がここにある」と述べた。
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