企業AIの成功の鍵はモデルではなく「コンテキスト」──アトラシアンが「Team'26」で示した、組織インテリジェンスへの道筋
「Atlassian Team'26」 レポート
JiraとConfluenceが「組織の記憶」になる──チームワークグラフの設計思想
「チームワークグラフ」(Teamwork Graph)は、こうした発想を実装した可視化の仕組みだ。マイクCEOは「データベースでもファイルの集合でもない。仕事・人・ツールをつなぐ結合組織(connective tissue)。会社の鼓動のようなものだ」と形容した。Rovoがその上に乗ることで、組織全体が「知っていること」をAIが引き出せるようになる。グラフが深まるほどRovoの推論精度が上がり、Rovoへの投資がさらにグラフを豊かにする──その循環がアトラシアンの設計思想の中心にある。
チームワークグラフはどのように育つのか。最高製品・AI責任者のタマル・エホシュア(Tamar Yehoshua)氏はキーノートで解説した。Jiraでワークアイテムを作り担当者にアサインする、Confluenceのページや録画を紐づける、コネクター経由でGitHub、Salesforce、Google Drive、Microsoft Teamsと接続する、こうした日常業務の一つひとつの操作で、別のシステムに散らばっていた知識がJiraとConfluenceを軸に束ねられていく。「目標は、どんな変更もチームワークグラフに10分以内に反映することだ」と、リアルタイム性への投資に触れた。
このグラフの起源はAI以前にさかのぼる。シェリフ氏によれば、6年前からJiraを使う顧客はプロジェクトにGoogle Doc、コードにGitHub、仕様にFigmaをリンクし始めていた──AIのためではなく、仕事の必要からだ。毎週アトラシアン全体で数千万のリンクが貼られ、人間たちが意図せずグラフを育ててきた。「Googleのページランクに似ている。会社内でのそれに相当するものだ」とシェリフ氏は言う。
Team'26では、グラフを拡張する一手としてセマンティックコード・インテリジェンスが打ち出された。25年・15億行のコードをセマンティックにインデックスし、コードの意図やビジネスロジックを理解する検索エンジンとして機能する。「コードはビジネスにとって巨大なコンテキストだ」とシェリフ氏は宣言した。さらにMCP(Model Context Protocol)とCLI(コマンドラインインターフェース)を通じて、チームワークグラフはアトラシアンの外にも開放される。ClaudeやCursorといった任意のAIエージェントがグラフを利用でき、社内テストではCLI接続で回答品質が44%向上、トークンが48%削減されることも確認された。「グラフはアトラシアンのものではなく、お客様のものだ」──シェリフ氏はコンテキストを囲い込まない姿勢を強調した。
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京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)
ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZine/AIdiverには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail ...
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