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企業AIの成功の鍵はモデルではなく「コンテキスト」──アトラシアンが「Team'26」で示した、組織インテリジェンスへの道筋

「Atlassian Team'26」 レポート

RovoとチームワークグラフがJira/Confluenceに乗るとき

JiraやConfluenceに蓄積された情報を横断的に活用できるAtlassian Rovo

 マイクCEOはRovoを「コンテキストとインテリジェンスをビジネスの実際のモメンタムへと変換するインターフェース」と位置づけた。現在Fortune 500の75%がRovoを利用し、月間のエージェント操作は5,000万回を超える。顧客調査によれば、ナレッジワーカーの89%が何らかの形でAIを使うが、日常のワークフローに統合できているのは20%台にとどまる。「AIをツールとして使う状態と、組織内で生産性を高めるために統合している状態の間に、まだ大きなギャップがある」──このギャップを埋めることがRovoの役割だ。統合の成功例として挙がったExpediaは、200以上のRovoエージェントで週400〜500時間の節約を実現したという。

 シェリフ氏はAI活用の成熟を、要約・タスク補助のアシスタント段階から、特定ナレッジへの組み込み、繰り返しプロセスの自動化、そしてチーム横断のエージェントオーケストレーションへ──という4段階で整理する。オンボーディング時にAIエージェントを使った新入社員のその後のAI利用率が約40%上昇したというデータは、この成熟がエンゲージメントの深さに直結することをうかがわせる。

 チームワークグラフはアトラシアン製品の内側にとどまらない。AIブラウザ「Dia」を率いるジョシュ・ミラー(Josh Miller)氏も登壇し、グラフがDiaに接続されると明かした。ナレッジワーカーが一日の80%を過ごすブラウザに組織の記憶が届くことで、個人の行動と組織のコンテキストが合流する。「AIにプロンプトを打つ必要はない。プロアクティブに助けてくれるべきだ」──それがジョシュ氏のブラウザ設計の根底にある思想だ。

「SaaS is Dead」言説への、アトラシアンの回答

 今回のTeam'26で筆者にはもう一つの関心があった。昨年から市場に広がる「SaaS is Dead」──AIによってSaaSアプリケーション層は不要になり、エージェントのオーケストレーションはハイパースケーラーやLLMプロバイダーに奪われるという言説への、アトラシアンの応答である。同社も一時はピーク時から市場価値の7割近くを失った象徴的存在の一つだ。会期中、幹部が「SaaS is Dead」を口にする場面はなかったが、応答は各キーノートやブリーフィングの随所で組み立てられていた。

 メディアブリーフィングでタマル氏は、ハイパースケーラーとの競争優位を問われ、「単一プラットフォーム勝者総取り」という前提から距離を置いた。「一つのオーケストレーションプラットフォームになるとは思っていない。複数のオーケストレーターが共存し、連携することになる。JiraはSoR(システム・オブ・レコード)であり、Confluenceは組織全体をつなぐ。AI以前から何百万ものワークロードがJira上に構築されてきた。今はエージェントもJira上に構築されている」。Teamwork Collectionを率いるサンチャン・サクセナ(Sanchan Saxena)氏はより踏み込み、「過去2年間はAIの実験の年だった。だがもう実験の時代ではない。AIなしでは何も存在すべきでない世界に入った──すべてがAIで再構築されるべきだ」と述べた。

 インテリジェンスのコモディティ化を先に認めたうえで、戦場をコンテキストへ移し、JiraとConfluenceを20年積み上げてきた組織の記憶として再定義する。一方でMCPやCLIを通じてグラフを外部に開放し、「囲い込まないSaaS」のポジションを打ち出す──コモディティ化を恐れて防衛するのではなく、それを前提に別の戦場を設定する。モデルのラッピングにとどまるSaaSは死んでも、コンテキストによって人・仕事・組織につながれたシステムは成長する。Team'26が示したのは、AI時代のSaaSはどう生き延びるかという問いへの、アトラシアンなりの解答だった。

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この記事の著者

京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)

ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZine/AIdiverには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail ...

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