IT運用自動化を組織全体へ広げるAnsible活用戦略──AIを制御する「インフラ共通基盤」の真価
レッドハットが推進する“フルスタック・インフラ自動化”へのアプローチ
IT運用を自律型へ変革する3ステップとは
清水氏は、IT運用における人の介在を減らし、運用の自律性を高めていくための段階的な進化について下図を示して説明した。
初期段階は「セルフサービス化」だ。利用者がポータルやGitを通じて要求を発行すると、自動化処理が実行され、VM作成やネットワーク設定、ソフトウェア導入などが行われる。これにより、チケットやメールのやり取りにともなう待ち時間が解消され、利用者だけで一連の手続きを完結できるようになる。
次の段階は「スケジュールベースの自動化」。証明書更新や設定監査などの定期的に発生する作業を自動実行することで、エンジニアはリアルタイム対応から解放され、結果確認に専念できる。
最終段階は「イベント駆動(Event-Driven)の自動化」である。監視やログ、セキュリティアラートといったイベントをリアルタイムに処理し、システムが自動で評価/しかるべき対応を判断して復旧対応やパッチ適用、インシデント起票などを実行する。これにより、一次対応から人手を排除し、インフラが自律的に状態を維持/回復する運用が実現する。
清水氏は、こうした自動化の取り組みをサーバー単体などの個別最適にとどめるのではなく「ネットワーク/ストレージ/クラウド/サイバーセキュリティ/ITSMを含めた『フルスタック・インフラ自動化』へ拡張することが重要だ」と強調する。
自律運用を支える「Red Hat Ansible Automation Platform」の価値
IT運用の自動化を組織全体に適用するためには、インフラを一元的に扱える共通基盤が欠かせない。その役割を担うのが「Red Hat Ansible Automation Platform(AAP)」だ。AAPは、オープンソースの自動化ツールである「Ansible」をベースとし、企業における運用とガバナンスを一体で扱えるよう設計されたプラットフォームである。
Ansibleは構成管理ツールとして進化を続けており、現在では主要アナリストからインフラ自動化分野のリーダーに位置づけられている。その基盤上に構築されたAAPが支持される理由について、清水氏は「自動化対象の幅広さと強力なエコシステムにある」と述べる。OSやサーバーに加え、ネットワーク機器、ストレージ、サイバーセキュリティ製品、Kubernetes、パブリッククラウド、エッジまで幅広く対応しており、その基盤となるのが豊富なコンテンツコレクションだ。認定済みコレクションは200以上、パートナー企業も80社以上にのぼる。
Ansibleの自動化のアクションは、「Playbook」と呼ばれるYAML形式のテキストファイルに記述される。たとえば、対象のWebサーバーに対して、パッケージをインストールして設定ファイルを配置し、サービスを起動するという一連のあるべき状態の流れを、人間にとっても可読性の高いコードとして定義できる。
Playbookの作成/実行が各エンジニアのローカルマシンにおけるコマンドライン環境にとどまっているうちは、組織的な自動化とはいえない。小規模な環境やステージング環境であれば十分に機能するが、エンタープライズ組織全体で安全に自動化をスケールさせるためには、ガバナンスとコントロールを提供するプラットフォームが必要となる。その役割を担うのがAAPだ。
AAPは、システム全体のオーケストレーションと統制を行う「コントロールプレーン」と、実際にPlaybookを実行する「エグゼキューションプレーン」に分離されたアーキテクチャを採用している。コントロールプレーンの中核を担うのは「Automation Controller」というコンポーネントだ。
Automation Controllerは直感的なWeb UIとAPIを備え、RBAC(ロールベースアクセス制御)/監査ログ/認証情報/ジョブスケジューリングなどの運用機能を一元的に扱える。Playbookはジョブテンプレートとして登録し、権限設定に基づいて安全に実行できるほか、複数のジョブを連結したワークフローも定義できる。
自律運用の中核となるイベント駆動の自動化を実現する仕組みとして、AAPには「Event-Driven Ansible(EDA)」が統合されている。EDAは、監視ツールやセキュリティ製品からのイベントをリアルタイムに受信し、ルールに基づいて評価/判断したうえで、対応するジョブを即座に実行するもの。これにより、人手を介さずにシステムが自律的に状況を判断し、回復処理が可能となる。
清水氏は、AAPを共通基盤として活用することで、単なる作業削減にとどまらないIT運用の変化が生まれると強調する。
「AAPを活用することで、リアクティブな対応が中心の運用から、事前に自動化を設計するプロアクティブな文化へと転換させることができ、標準化やオンボーディング、障害対応の効率も向上します。また、自動化された共通パイプラインへの移行によって属人化が解消され、組織のサイロ化抑制にも期待できます」(清水氏)
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EnterpriseZine編集部(エンタープライズジン ヘンシュウブ)
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