IT運用自動化を組織全体へ広げるAnsible活用戦略──AIを制御する「インフラ共通基盤」の真価
レッドハットが推進する“フルスタック・インフラ自動化”へのアプローチ
AIと融合した自律運用プラットフォームの未来と注意点
IT運用の自律化を進めるうえで鍵となるのが、イベント発生時の評価/判断をどのようにAIで実装するかという点だ。セッションの後半では、自動化とAIの融合について解説がなされた。
清水氏は、イベント時の評価/判断の実装方法として大きく2つのアプローチを挙げる。1つは従来の「決定論的(Deterministic)なアプローチ」で、想定される条件やエラーパターンを事前に網羅し、“if-then”のルールとしてPlaybookやルールブックに定義する手法だ。確実性が高い一方で、インフラの複雑化にともない、その網羅的な定義を人手で維持し続ける負担は大きくなる。
これに対し、LLMの発展により実用段階に近づいているのが「エージェント型アプローチ」だ。発生した事象やインフラの状態をAIに読み込ませ、次のアクションを動的に推論/決定させることで、従来のような詳細な事前定義の負担を軽減する効果が期待されている。
レッドハットはAAPの次世代機能として、このエージェント型アプローチの実装を進めており、自動化ワークフローに生成AIエージェントを組み込める新機能「Ansible Automation Orchestrator」のリリースを予定している。
このエージェント型アプローチの具体像として、セッションでは深刻な脆弱性が本番環境で発見されたことを想定したデモが行われた。監視ツールが脆弱性を検知すると、その情報をトリガーにAAPがインシデントチケットを自動起票し、AIエージェントが影響範囲の特定とパッチ適用計画(段階適用やロールバックを含む)を立案する。その計画を人が承認した後、自動でパッチ適用とチケット更新が行われ、最後に対応内容のサマリーレポートが生成されるまでの一連の流れが示された。
こうした高度な自動化を実現するためには、AIの活用について慎重な設計が必要だ。「AIエージェントによる推論は自動化に有効である一方、インフラ変更やパッチ適用といった影響の大きい変更作業を完全に任せることはリスクが高い」と清水氏は指摘する。
そのため、AIの判断には必ず人の承認プロセスを組み込み、RBACや認証情報管理、監査ログといったAAPの統制機能の下で実行することが欠かせない。AIを組織のガバナンスの枠組み内で適切に制御することが、自律運用の前提になるという。
まずは「タスクの自動化」から──次世代IT運用に向けた必須科目とは
セッションの締めくくりとして、清水氏はこれからのITインフラ自動化に向けた戦略的な展望を述べた。
「AI時代のIT運用においては、システム構築(Day1)の自動化だけでなく、日々の運用やトラブルシュート、セキュリティ対応といったDay2オペレーションをいかに自律化できるかが重要なテーマになってくるでしょう。Day2オペレーションには、イベント駆動型の自律運用に向いた作業が多く含まれているため、今後より注力する必要があると考えています」(清水氏)
とはいえ、明日からすぐにAIエージェントを組み込んだ自律運用を始められるわけではない。清水氏は「まずは、人がトリガーとなる“タスクベースの自動化”を着実に現場で実装し、自動化の実績を作ることから始めるべきだ」と主張する。そのうえで、インフラのあるべき状態を正しく定義し、構成ドリフトを防ぐための大前提として、組織全体でGitとIaC(Infrastructure as Code)を共通の必須科目として習得/定着させることが、強固な土台づくりにつながると強調した。
こうした土台が整って初めて、その上に生成AIやAIエージェントを組み合わせることができるようになる。AIの活用により、これまで負担となっていた複雑なルールの事前定義を簡素化し、重大なインシデント対応における不要な人手を減らすことで、より高度な自律運用へと変革できるのだ。

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EnterpriseZine編集部(エンタープライズジン ヘンシュウブ)
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提供:レッドハット株式会社
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