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EnterpriseZine Press

エンタメ業界で問題視されがちな“AIの倫理的リスク” クリエイターとの摩擦を回避するAI導入のカギ

クリエイターたちが抱く「コントロール喪失」の懸念とは?

活用の普及に不可欠な「信頼」をどう勝ちとっていくのか

 「コントロール喪失」の恐怖という心理的・倫理的リスクに対し、AI機能を搭載したサービス展開を行うベンダーの立場として、オートデスクはどのようなアプローチをとっているのか。そのひとつとして、透明性の確保とガバナンス体制の構築がある。同社は実装するすべてのAI機能において、AIがブラックボックスの中で自律的に作品を完成させるのではなく、アーティスト自身がAIに指示を与え、生成された結果をレビューして確認し、必要に応じて細かく編集できることを前提として設計している。最終的なクリエイティブの決定権(コントロール)を常に人間が維持できる環境を提供することで、心理的なリスクを低減しているのだ。

 さらに、企業としての説明責任を果たすための仕組みとして「Autodesk AI 透明性カード」を公開している。これは、提供される個々のAI機能が具体的にどのように機能するのか、いかなるデータソースを利用して学習されているのか、そして利用者のプライバシーや知的財産、セキュリティを保護するためにどのようなセーフガードが設けられているのかを明示するものだ。

 こうした透明性の担保は、自社内だけのルールメイキングにとどまらず、グローバルな法規制や標準規格への準拠へと拡張されなければならない。AIガバナンスの要請が世界中で高まる中、オートデスクはAIマネジメントシステム規格であるISO 42001を取得している。

 さらに、米国国立標準技術研究所(NIST)のAI安全研究所コンソーシアム(AISIC)への参画による安全性ガイドライン策定への協力や、デジタルコンテンツの出所と透明性を担保する「コンテンツ来歴および信頼性のためのコアリション(C2PA)」の技術仕様への完全準拠など、多角的なリスクヘッジを展開している。

 一方で、現場への導入段階における「摩擦」という運用リスクをいかに最小化するかも重要な課題だ。どれほど透明性が高く優れたAIであっても、クリエイターにこれまでの働き方を根本から変えるような技術の習得を強要すれば、導入は高い確率で失敗する。Colella氏は「信頼は、クリエイターがすでに使っているツールにAIを組み込むことで築かれるものであり、新しいワークフローや行動を強制することでは決して得られない」と語る。

Diana Colella氏, Executive Vice President, Media & Entertainment, Autodesk Canada Co.

 オートデスクは、プロフェッショナル向けの3D制作ソフトウェアとして普及している「Maya」や「3ds Max」といった既存の主要ツールに対して、AI機能を自然な形で組み込むアプローチをとっている。クリエイターは日常的な作業環境を変えることなくAIの恩恵を享受できるとした。

 そして、これらすべてのAI活動を安全に機能させるための基盤となるのが、分断されたデータを統合するアーキテクチャだ。データがサイロ化された状態では、AIはプロジェクトの文脈を正しく理解できず、セキュリティや知財保護の観点からもリスクが高い。

 このデータリスクに対処するため、オートデスクはM&E業界のためのインダストリークラウド「Autodesk Flow」を展開している。Flowは、制作の全ライフサイクルにわたって人、データ、ワークフローを単一の安全な環境で統合し、スタジオの知的財産を危険にさらすことなくAIが機能するための構造化された基盤を提供する。特定のベンダー製品に縛られないオープンバイデザイン思想に基づいて構築されており、サードパーティのアプリケーションやスタジオ独自ツールとも連携できる点が、IT部門にとって利点となっているそうだ。

 最後にColella氏は、M&E業界における技術提供に関して、以下のように今後の展望を述べた。

 「現在スタジオがすでに利用しているオートデスクのツールに、さらに多くのAI機能を組み込むことに注力します。同時に、“コネクテッド・プロダクション”を実現し、Autodesk Flowを信頼できるデータハブとして位置付け、制作に関わる人・データ・プロセスを統合することで、場所に関係なくスタジオが一体となって効率的に制作できる環境を提供。そして、 信頼性と責任あるAIを重視し、クリエイターが安心して利用できるAIの実現をリードしていきます。クリエイターが信頼を感じて初めて、AIの本格的な導入と活用が進むでしょう」(Colella氏)

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奥谷 笑子(編集部)(オクヤ エコ)

株式会社翔泳社 EnterpriseZine編集部

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