AIエージェントと人が“自然に”連携できる基盤の条件 安定運用を実現するカギは「〇〇の両立」にあり
社員のAI活用率94%を維持しながら、安全な活用体制を両立するために行っていること
データを整備し、プロセスを標準化し、システムを刷新する。こうしたモダナイゼーションを進めてもなお、業務のスピードが変わった実感がないという企業は少なくありません。その次に求められるのは、AIエージェントと人がそれぞれの強みを活かし、業務の中で自然に協働できる基盤の設計です。「手強い“2025年の崖”を乗り越える:モダナイゼーション最前線」の最終回である本稿では、連載全体の総括としてハイブリッドな協働基盤の設計思想と実践のあり方を考察します。
AIエージェント時代の到来、業務基盤に求められる変化
生成AIの進化は、企業におけるAIの使い方を大きく変えつつあります。当初、生成AIの主な用途は「質問に答える」ことでした。社内文書を要約する、メールの下書きを作る、調べものを手伝う──こうした個別タスクの効率化が中心です。その後、RAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)の普及により、社内のナレッジベースや業務データを参照しながら、より正確で文脈に即した回答を返せるようになりました。
そして今、AIは次の段階に入りつつあります。それが「AIエージェント」です。AIエージェントは、与えられた目的に対して自ら計画を立て、必要な情報を収集、判断、実行まで行う存在です。単に「聞かれたことに答える」のではなく、「業務プロセスの中で自律的に動く」──ここに本質的な違いがあります。
この変化は、企業にとって大きな意味をもちます。AIが業務の中で動くということは、AIが参照するデータが整っていなければ正しく判断できず、業務プロセスが標準化されていなければどこで何をすべきかわからず、権限やルールが定まっていなければ安全に実行できないということです。つまり、AIエージェント時代に問われるのは「AIに何ができるか」ではなく、「AIが動ける環境を、企業が用意できているか」なのです。
本連載はこれまで、モダナイゼーションに関するさまざまなテーマを扱ってきました。一見するとそれぞれ独立した議論に見えますが、AIエージェントが注目される現在の視点で捉え直すと、結果として同じ方向に収れんしていることが見えてきます。
ここで、各回のポイントを簡単に振り返りましょう。第1回では、モダナイゼーションの本質は古いITの刷新ではなく、ITに合わせて複雑化、固定化した業務プロセスの見直しにあると整理しました。第2回では、SFAの例を通じて、ツール導入だけでは成果は出ず、日常業務や会議のプロセスを変えなければデータは活用されないことを示しました。第3回では、社内の依頼や申請、問い合わせの分散を解消するため、業務の「玄関口」を整備し、導線を一元化する重要性を論じました。第4回では、既存システムを一律に刷新するのではなく、リバイスとリアーキテクトを使い分けることで、既存資産を活かしつつ変化に対応できる基盤を構築する考え方を整理しました。
これらはもともとAIエージェントを前提とした議論ではありません。しかし、
- データが整備されていること
- 業務プロセスが標準化されていること
- 業務の導線が明確であること
- システムが変化に追随できる構造であること
といった論点は、結果として、AIが業務の中で機能するための前提条件と重なります。
言い換えれば、第1回から第4回は、「AIをどう使うか」の前にある業務基盤の整備について論じてきたものともいえます。最終回となる本記事では、これまでの議論を上記の視点で再整理し、AIエージェントと人が協働する業務基盤、つまり“ハイブリッドな協働基盤の完成形”を描いていきます。
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北林 拓丈(キタバヤシ ヒロタケ)
株式会社日立ソリューションズ 業務革新統括本部 AIトランスフォーメーション推進本部 チーフAIエバンジェリスト。 入社後、Javaエンジニアを経て米国業務研修後、大手通信事業者のシステム再構築プロジェクトなどに参加。2020年からシリコンバレーに駐在し、スタートアップ連携に従事しつつ、生成AIに...
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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