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EnterpriseZine編集部が最旬ITトピックの深層に迫る。ここでしか読めない、エンタープライズITの最新トピックをお届けします。

『EnterpriseZine Press』

2026年冬号(EnterpriseZine Press 2026 Winter)特集「AI時代こそ『攻めの経理・攻めのCFO』に転じる」

手強い“2025年の崖”を乗り越える:モダナイゼーション最前線

AIエージェントと人が“自然に”連携できる基盤の条件 安定運用を実現するカギは「〇〇の両立」にあり

社員のAI活用率94%を維持しながら、安全な活用体制を両立するために行っていること

攻めと守りを両立させた実践例:社員のAI活用率94%の中、安全性を担保するには

 では、「攻めと守りの両立」は、実際の企業活動の中でどのように実現されるのでしょうか。ここでは、日立ソリューションズにおける取り組みを例に、その具体像を紹介します。

攻め:AIエージェントを業務に埋め込む

 攻めの側面では、社内の自律的活用基盤を中心に、AIエージェントの業務実装を進めています。この基盤上には約90種類のAIエージェントアプリケーションがメニュー化され、セールス、マーケティング、SE支援、管理業務などの領域で全社展開が進んでいます。

 問い合わせ対応のAIエージェントは、勤怠入力や輸出管理、経理、コンプライアンスなど8つの業務領域で本番運用を開始しました。従業員は必要なナレッジや手続きを迅速に取得でき、AIは単なる支援ツールではなく、業務プロセスの一部として機能する存在に変わりつつあります。

 また、当社は2025年度、グループ全体を対象に生成AIおよびAIエージェント活用のアイデアや事例を募集するコンテストを実施。その結果、1,800件超の応募があり200件超の優良ユースケースが創出されました。社長賞を受賞した米国グループ会社では、同社の輸出管理業務において、自ら開発した自律型AIエージェントを活用し、審査業務フローの約70%を担っています。生成AIを週1回以上業務利用する社員の割合は2026年3月時点で94%、プロジェクトへのAI適用率は100%に到達しました。

 このように、「使わせる」のではなく「使いたくなる環境」を整え、使いたくなるようにモチベーションとリテラシーの向上を促すことが、スモールスタートによる定着と横展開を支えるカギとなります。

守り:ガバナンスとリスク管理の同時整備

 守りの側面については、AIガバナンス協会への参画を通じて、政策提言や行動目標の策定に関与しています。社内ではAIリスク管理基盤の構築を進め、AIの利用状況とリスクの可視化、方針策定、監視と改善のサイクルを回す体制を整えています。加えて、日立グループのAI統括委員会のもと、ガバナンス制度を運用し、全社的な規則とガイドラインの整備、相談窓口の設置、全社教育も展開しています。

体制:推進と統制を一体で運営する

 こうした攻めと守りを支える体制として、2024年にAIトランスフォーメーション推進本部を設立し、AI戦略・企画、技術開発・業務適用、ガバナンスの3機能を統合しました。 全体のコンセプトは「DX by AX toward SX」──AI技術を駆使するAIトランスフォーメーション(AX)を進めることにより、社会と顧客と自社のDXを加速させ、持続可能な社会の実現を目指すものです。

日立ソリューションズにおけるハイブリッドな協働基盤の実践構造(クリックすると拡大します)

 ここで重要なのは、これらの取り組みが個別施策の寄せ集めではないという点です。業務にAIを組み込む導線設計、AIと人の役割の再設計、そしてガバナンスの整備が一体となることで、初めてハイブリッドな協働基盤は実務として機能します。

 本連載を通じて一貫して述べてきたように、モダナイゼーションのゴールはシステムを新しくすることでも、AIを導入することでもありません。目指すべきは、変化に対応しつづけられる業務基盤をつくることです。

 労働人口の減少、技術的負債の蓄積、業務プロセスの硬直化、そして市場変化の加速。こうした環境の中で企業に求められているのは、人手不足を補うための部分最適ではなく、企業全体の意思決定と実行を速くする仕組みです。

 これまで論じてきたように、その仕組みを実現するには段階があります。まず、データ、プロセス、既存資産という業務基盤を整える。次に、AIと人の役割を再設計し、協働が自然に回る業務の流れをつくる。そして、攻めと守りを両立させながら、AIエージェントを安全に拡張できる体制を築く。この一連の取り組みの先にあるのが、ハイブリッドな協働基盤です。単にAIエージェントを導入して終わりではなく、業務の変化に応じてエージェントを安全に増やし、人とAIがともに成果を出し続けられる状態を維持できる基盤。それを構築し、運用できる力こそが、これからの企業の競争力になると考えられます。

 AIに仕事を奪われるのか、それともAIとともに価値を創るのか。その分岐点はAIの性能ではなく、企業がどれだけこの基盤を整えられるかにかかっています。本連載を通じて論じてきた、手強い”2025年の崖"を真に乗り越える手段こそが、このハイブリッドな協働基盤の構築にほかならないと私たちは考えています。本連載が、読者の皆さまにとって、自社の業務基盤を見直し、AIと人がともに成果を出せる環境づくりへの一助となれば幸いです。

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この記事の著者

北林 拓丈(キタバヤシ ヒロタケ)

 株式会社日立ソリューションズ 業務革新統括本部 AIトランスフォーメーション推進本部 チーフAIエバンジェリスト。 入社後、Javaエンジニアを経て米国業務研修後、大手通信事業者のシステム再構築プロジェクトなどに参加。2020年からシリコンバレーに駐在し、スタートアップ連携に従事しつつ、生成AIに...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://enterprisezine.jp/article/detail/24474 2026/07/15 08:00

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