フロンティアAIで攻撃が高度化/国家間のサイバー戦もAIで激化 企業が構築すべき「動的防御」の姿とは
攻撃者による時間制約が消えた今、企業は「見えない状態」を作り出す必要がある
AIによって地政学リスクも高度化 湾岸戦争を起源に考える
昨今のサイバーリスクを考えるうえで、AIの脅威以外に注目すべきものとして、地政学リスクがある。2026年現在の緊迫した地政学的サイバー脅威を正しく理解し、IT部門が戦略的な防衛策を構築するためには、歴史の教訓に立ち返る必要があるだろう。イベントのブレイクアウトセッションに登壇したAllie Mellen氏は、その起源を1990年の湾岸戦争に求めた。
当時、イラクのサダム・フセイン大統領は「アメリカ社会は1回の戦闘で10,000人の死者を出せば耐えられない」と主張し、米軍の継戦能力を侮った。ベトナム戦争後の厭戦世論を突く論理としてはある意味で正鵠を得ていたが、フセインが誤認していたのは米軍がベトナムの敗戦を経て、その戦闘ドクトリンを「統合共同作戦」へと進化させていた点であった。
米軍は「C3CM(指揮・統制・通信対抗手段)」と呼ばれる新たな概念を立ち上げ、情報のコントロールによって敵の目と耳を塞ぐアプローチを採用。空爆によって敵のレーダーサイトや指揮統制システムを完全に破壊すると同時に、ラジオやチラシを用いた心理戦を展開した。さらに、地上戦の直前には欺瞞戦術(デセプション)を展開してイラク軍に海上からの上陸作戦を想起させ、本隊は手薄な砂漠の西翼を迂回して包囲する「左フック作戦」を完遂。その結果、地上戦開始からわずか4日間で87,000人ものイラク兵が降伏し、多国籍軍側の犠牲者を極限まで抑える勝利を収めた。
この歴史において注目すべきは、「サイバー作戦は、単独で行われるよりも、物理的な作戦や心理戦、政治的キャンペーンなど、他分野の行動と高度に統合されたときに、最大の破壊力を発揮する」という点だろう。
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