タニウムは2026年10月21日、アイソプラと共同で記者説明会を開いた。AI基盤「Tanium Atlas」に、アイソプラが提供を開始したPC操作ログ収集アプリ「iScope」のログを組み合わせ、内部犯行の調査に使う構想を説明した。日本語で問いかけるだけで、流出が疑われる端末や経路を調べられるようにするという。
タニウムは端末やサーバーにエージェントを入れ、状態をリアルタイムかつ網羅的に集める製品を提供しており、特許技術「リニアチェーン」を基盤にしている。ユースケースはエンドポイント管理、エクスポージャー管理、セキュリティ運用の3つだ。
楢原盛史氏は、今後は外部からのサイバー攻撃だけでなく、内部犯行のリスクも無視できなくなると語る。同氏によると、AIの普及で手口が変わってきた。従来は社員や委託先といった人が起こす事故が中心で、持ち出しの経路もUSBや私用メールが主だった。いまはそこに、生成AIへの機密情報の入力や未承認AI経由の漏洩が加わり、AIエージェント(非人間ID)そのもののリスクも出てきたという。
持ち出しの経路が見えにくくなり、事故調査で足取りを追いにくくなると同氏は話す。対策も、規程や定期監査といった静的な管理から、実態を技術で把握する動的管理に移る必要があると指摘した。また、公的なデータとして、漏洩を認識した企業が2020年から2024年で約6.8倍、在籍社員による意図的な漏洩が約3.9倍に増えたと紹介した。法制度の面では、不正競争防止法や個人情報保護法、不正アクセス禁止法、刑法、経済安全保障関連の法律があり、社員が軽はずみに情報を持ち出しただけで、個人に最大10年、組織に最大10億円の罰則が科されうると説明している。こうした認識が日本の組織では弱いというのが同氏の見方だ。
組織に求められるのは、人とAIのアクセス制御、攻撃の全経路の即時特定とアタックパスの可視化、全端末のログの常時監視といった、外部犯行への対策に近い備えだという。セキュリティ担当者がやりたいことは、情報漏洩の確認、退職者のデータ持ち出し、労働時間の客観的な把握、シャドーAIを含む生成AIの利用調査、不正な外部媒体の確認、個人情報の持ち出しの6つに整理できる。Atlasのコンソールに日本語で入力すれば、管理するPCが1,000台でも1万台でも結果が瞬時に上がってくると楢原氏は語る。
その基盤となるAtlasについて、執行役員の阿部俊氏は2つの調査を紹介した。Gartnerの調査では、2030年のIT業務の75%は人がAIを活用して行い、25%はAIが単独で担う。Confluentが日本を含む14ヵ国、従業員500人以上の企業を対象にした調査では、ITリーダーの72%がリアルタイムデータ基盤の不足を、AI活用拡大の障壁に挙げた。「LLMのモデルやバージョンが重視されがちだが、同じくらい、AIに何を見せられるのかというデータ基盤が重要になる」と阿部氏は語る。
Atlasは、端末から取得するリアルタイムで正確かつ網羅的なデータ、LLMが外部から学ぶ各種インテリジェンス、世界で約3,600万台の端末から集めるテレメトリデータを横断して扱う。可視化と分析、判断、是正までをAtlas自身が進め、設定変更などの是正操作はAPIを通じて端末に実行できる。操作はチャット形式で、日本語で指示を入力する。従来の方式は、定期的に吸い上げたデータをデータベースに格納してAIに当てるため、分析対象はスナップショットにとどまる。Taniumは端末から直接データを取り、足りなければその場で追加取得できる点が異なると阿部氏は説明した。
内部犯行の調査で使うには、操作ログが欠かせない。タニウムは最大約2,000種類のセンサーで端末の情報を取れる一方、操作ログのようなログ系の情報は苦手としてきた。リニアチェーンは小さなデータを速く集める設計で、タイムスタンプ付きのログは1件ごとに内容が異なり、データが膨らむ。阿部氏は「できないわけではないが、向きではない」と説明する。日本では操作ログのニーズがあるものの、グローバル企業のタニウムとしては、コア機能に入りにくい事情があったという。
その穴を埋めるのがiScopeだ。アイソプラ取締役の下田泰輝氏によると、ログを端末内にためておき、必要な分だけを回収する仕組みを採った。対象は7機能で、ChromeやEdgeでアクセスしたURL、ファイルの読み込み・コピー・削除、通信先、印刷、クリップボードにコピーしたテキストやファイル、ChatGPTの画面を開いたといったウィンドウのタイトル、PCの起動・終了やログオン・ログオフ、リモートデスクトップのアクセスを記録する。クリップボードではパスワードと思われる文字列をマスクする。ログ収集専用のサーバーは要らず、Taniumの標準画面で使える。
ログが加わる意味を、阿部氏はこう語る。「ウィンドウログだけを時系列で見ても、それだけでは見過ごされがちだ。たとえば、Boxにアクセスしていて、機密情報にアクセスしていてその情報が外に出ているかどうか、Atlasの相関分析によって分かる」(阿部氏)
質疑では、他社のEDRを組み合わせている企業に対する差別化も問われた。阿部氏は、可視化と是正を別のツールで行うと、是正したはずの内容が元の可視化ツールでは粒度の違いから直っていないように見えることがあると指摘する。「可視化と是正の繰り返しを1つのプラットフォームでやったほうが、正確性を常に担保できる」(阿部氏)
楢原氏は、取得できるログの精度や量、種類が製品ごとに異なる点に加え、収集の速さを強みに挙げた。1,000台や1万台に全数でクエリを投げ、在宅勤務の端末も含めて瞬時に結果を得るのは、他社製品では難しいとの見方だ。日本の企業はログを大量にためているが、多くは見ていないとも話した。「事故があったときに途方もない作業をしながら追跡するが、普段は活かしきれていない」(楢原氏)
iScopeはタニウムの標準機能ではなく、アイソプラのライセンスを別途購入する形で提供する。下田氏は、今回の機能は一部にとどまり、日本の企業ニーズに沿って拡張していく考えを示した。
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京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)
ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZine/AIdiverには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail ...
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