コンテキストとは「情報量」ではない──エンタープライズでの大規模エージェント展開「第一の柱」とは?
IBM×Confluentによる“Streamhouse”は新たな主流アーキテクチャとなるか
米国アトランタにて、2026年10月26日~29日(現地時間)にわたりIBMの大規模年次イベント「IBM TechXchange 2026」が開催中だ。IBM主催イベントの中でも、エンタープライズでのAIエージェントの大規模“実装”に焦点を当て、より実務者目線・技術者目線でさまざまな企画が用意されているのが本イベントの特徴である。基調講演では直近のアップデートだけでなく、新製品の発表もあった。EnterpriseZineでは、イベントの内容・様子を複数回の記事にわたりレポートする。
エンタープライズAIの「本番稼働」が要求する技術的ハードル
フラッグシップイベントの「Think」とは違い、TechXchangeはデベロッパーやインフラ・システム管理者、データサイエンティストなど、より実務レイヤーの技術者たちをターゲットとしたイベントとなっている。今年の参加者数は6,000人以上/85ヵ国、会期中は1,000超のハンズオンや分科会、講演が行われるほか、IBMエコシステムや協賛企業の展示ブース&体験エリアが展開された。
自律型のAIエージェントが組織の中にますます浸透しつつある昨今……。「昨年のTechXchangeではエージェントを『構築すること』がテーマだったが、今年はそれを『スケールさせる』フェーズへ移行した」とIBMのディネシュ・ニーマル(Dinesh Nirmal)氏は基調講演で語った。
人間を遥かに超越したタスク量をこなし、精度も上がり続けるAIエージェントを「使わない」という選択肢は、もはや現実的ではない。となれば、いかにして使うか、使える環境を構築するかという命題から逃げることは、企業にとって競争から淘汰されていくことを意味する。ITリーダーたちは、厳格な要件や安全性が求められるエンタープライズの環境で、いかに大規模かつ安全にエージェントを本番稼働させるかを本格的に考えなければならない。
では、本番稼働に向けて越えなければならないハードル、考慮すべき要件とは何だろうか。ニーマル氏は、5つの課題を挙げた。
- レイテンシー:多くの組織では、応答時間“2.5秒未満”という厳しい要求がある
- アーキテクチャ:単一エージェントなのか、マルチエージェントなのか。また、“監督”の役割を果たすエージェントなのか、“ワーカー”として動くエージェントなのか。誰がそのエージェントへのアクセス権限を持つのか、など
- コンテキスト:指示を出しても、コンテキスト(文脈)がなければユーザーの期待通りにはタスクをこなせない
- セキュリティ:人間のアイデンティティ中心だった世界から、エージェント・アイデンティティの管理が必須の時代へ移行
- 運用:APIやAIモデルが変わり、コストも増加しつづける中で、どのようにデプロイして管理するか
もはや、数種類程度の生成AIやエージェントを便利に使いこなすことは当たり前となった。今、我々が向き合っているのは、「複数のエージェントが大規模に連携・協働し、人間と肩を並べて働く環境」をどう作るかという問いである。
ニーマル氏は、ある大手金融機関の例を挙げた。ユーザー数約3000万人規模の顧客向けモバイルサービスを運営する金融機関だ。これほどの規模になると、1日におけるAIモデルの呼び出し回数は約850万回、トークン数は月間約2.4兆、処理するツールは24種類に及ぶ。この規模感と複雑性の中で、どうやって推論の呼び出しや動的な認証情報をローテーションさせればよいのか。これを考え、解決するのが「スケールさせる」ということだ。

スケールさせるために重要な柱は3つ──①Data(データ)、②Deployment(デプロイメント)、③Runtime(ランタイム)だ。まず、本稿ではデータの話を取り上げる

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名須川 楓太(編集部)(ナスカワ フウタ)
サイバーセキュリティとAI(人工知能)の分野を中心に、ソフトウェア/ハードウェアを問わず国内外の最新技術やルールメイキング動向を取材。そのほか、DX推進、IRなどのコーポレート領域でも情報を発信。※取材のご案内等は個人のメールアドレスか、EnterpriseZine編集部の問い合わせ窓口にお願いいた...
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