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EnterpriseZine編集部が最旬ITトピックの深層に迫る。ここでしか読めない、エンタープライズITの最新トピックをお届けします。

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2026年冬号(EnterpriseZine Press 2026 Winter)特集「AI時代こそ『攻めの経理・攻めのCFO』に転じる」

IBM TechXchange

大企業の「既存環境/厳格要件」はそのままにエージェントネイティブ化する、IBM流の解答が示された

AIネイティブ組織のハブに名乗りを上げたIBM Bob/既存資産を活かす堅実かつ現実的なIBMらしさ

名須川 楓太(編集部)[著]

 米国アトランタにて、2026年10月26日~29日(現地時間)にかけて開催中の「IBM TechXchange 2026」。ITの技術者・実務者たちが集まる大規模年次イベントにて、IBMはエンタープライズにおける大規模なAIエージェント「実装」をテーマに、組織が解決すべき技術的課題と、その解決アプローチを示した。

 前回の記事では、基調講演にて同社のディネシュ・ニーマル(Dinesh Nirmal)氏が、AIのスケールを実現するために見直すべき3つの柱として①Data(データ)、②Deployment(デプロイメント)、③RunTime(ランタイム)の3つを挙げたことを紹介。その中でも、①データの分野にフォーカスして、エンタープライズが見直すべきエージェントネイティブ組織の土台となるアーキテクチャの新たな選択肢を提案した。

前回の記事:IBMが提案するエージェンティック時代のデータアーキテクチャ

 本稿では、第二の柱である「デプロイメント」におけるIBMのコミットメントを取り上げる。AI駆動の開発パートナー「IBM Bob(以下、Bob)」や、AIエージェントを構築・運用・管理できる制御プラットフォーム「IBM watsonx Orchestrate」などが主なトピックだった。講演したのは、Bobの共同開発者であり事業責任者でもあるニール・サンダレサン(Neel Sundaresan)氏だ。

ニール・サンダレサン氏[General Manager, Automation and AI]
ニール・サンダレサン氏[General Manager, Automation and AI]

 厳格な要件と大規模環境を前提とするエンタープライズを第一に最初から設計されているのがIBM製品の特徴であり、それはBobでも同じだ。様々なAIコーディングツールやエージェント、開発環境が入り乱れる昨今だが、Bobはミッションクリティカルな業種・組織でも、機動力、柔軟性、ユーザー体験を損なわず、かつセキュリティや運用の厳しい要求に応えることを前提にすべてが作り上げられている。

Bobが全社AIエージェント展開の“玄関口”へと大幅進化、もう開発者だけのものではない

 昨年のTechXchangeで発表されてから約1年が経ったBobだが、すでにIBM社内でもグローバル約17万人以上が使用している。内訳としては、デベロッパーが約5万人、残りの約12万人は非開発者のナレッジワーカーだ。AI駆動開発の普及によって、開発とは無縁だったいわゆる文系人材たちも「自覚のないままソフトウェアエンジニアへ進化している」とサンダレサン氏。同社内だけでも、月間にして500万以上のタスク実行、200万以上のツール呼出、50万以上のスキル活用が行われており、週次アクティブ率は90%に達しているとのことだ。クライアントゼロ(=カスタマーゼロ)としても、着実に定着化と成果創出を積み上げている。

 2026年6月には「Bob 2.0」がリリースされた。AIの進化にともなう開発・業務プロセスのさらなる高速化や、複雑なプロジェクトの自動化、Bob自体のアーキテクチャの最適化などを理由に旧バージョンをゼロから再設計したのである。この2.0のリリースと同時に、Bobは「エンタープライズのための開発プラットフォーム」としての土台を確立した。

 そして今回、新たなBobファミリーの発表があった。

Bob Desktop:一般ビジネスユーザーでもコードを意識せずAIエージェントを構築・活用可能に

 開発者向けに提供している既存のBobとは違い、こちらは非開発者のナレッジワーカー向けである。ユーザーにコードやファイルを意識させない直感的なインターフェースとなっており、日常業務やタスクマネジメントなどを自動化・自律化できる。「ミッションクリティカルな組織でも抵抗感なく導入できるよう設計されたClaude Coworkのようなもの」だと捉えてもよいだろう。これにより、Bobは開発者向けに閉じたアシスタントではなく、組織を大規模にエージェントネイティブにするための“玄関口”として機能する、巨大なハーネス/パートナーになった。2026年11月より一般提供が開始される。

Bob Bazaar:社内でのAI横展開が容易に。信頼性とコストの問題を同時解決

 社内の他部門が独自に作成したAIエージェント、AIツール、スキルなどを、社内に閉じた形で共有できる。社内マーケットプレイスのようなイメージだ。同じ機能やエージェントを二度開発する手間・コストをカットできるほか、既に社内のポリシーやセキュリティ要件などを満たした信頼できるAIを即時に組織内で横展開できるメリットがある。

DevSecOps Premium Package:ソフトウェアサプライチェーン全体を一元カバー

 ソフトウェアの開発からデプロイ、運用に至るまでのライフサイクル全体にセキュリティ、コンプライアンス、ガバナンスを組み込む。以下のような機能を備えている。

  • AIが提案・生成したコードの脆弱性を探し、発見した場合には、自動で安全なバージョンへ差し替えたり、インストールをブロックしたりする
  • 都度のファイル保存時も、リアルタイムで脆弱性や危険な依存関係、情報漏洩のリスクなどを検知。修正もワンクリックで可能
  • 開発中のAIエージェントを自動で識別・ポリシー評価。インベントリへも自動で登録
  • GitHubなどのプルリクエストに/reviewとコメントするだけで、AIがコンテキストを読み解き、セキュリティやパフォーマンスに関する修正案をインラインで自動提示

人とエージェントが混在する組織の「制御層」を確立

 続いて、watsonx Orchestrateの大幅な機能拡張がアナウンスされた。2028年には、エンタープライズ1社あたりにつき平均150,000個のAIエージェントが稼働するという予測がある中で、各エージェントを一元的に管理・統制できるコントロールプレーン(制御層)の存在が欠かせなくなる。このニーズに応えるべく、今回watsonx Orchestrateに3つの主要アップデートが発表された。すべて一般提供開始となる。

【1】AI Gateway:サードパーティ製エージェントの管理も単一コンソールで

 既にAmazon Bedrockには対応していたが、新たにMicrosoft FoundryとGoogle Gemini Enterprise Agent Platformにも対応。これらのプラットフォーム上で構築されたエージェントも自動検出し、IBM製のネイティブエージェントと同じように単一インベントリで管理できる。これで、主要3大クラウドをすべて網羅したことになる。

【2】AgentOps Agent:エージェントをずっと「使い続けられるもの」に

 管理しているすべてのエージェントを継続的に評価し、異常や疑わしい点があった場合にはテストケースを自動生成。本番環境に再びデプロイする前に、エージェントのパフォーマンスを自動最適化する。同時にオブザーバビリティの役割も担う機能である。

 また、同じくエージェントの品質を担保し続けるための機能として、以下2つの機能も既に提供されている。

  • Trace Inspector:エージェントがタスクを完了するまでに「どんな工程を歩み、どんなアクションを行い、どんな外部ツールを呼び出したのか」を詳細なログとして残し、可視化する
  • Custom LLM-as-a-Judge:ユーザー組織におけるポリシーや要件に最適化された「LLMの評価基準」を自然言語で定義。実際の評価も自動で行う
【3】Agent Identity:エージェントをアイデンティティとして管理可能に

 すべてのAIエージェントに対しIDを付与して、各エージェントと従業員一人ひとり、さらにはシステムとの依存関係をリアルタイムで把握・管理できる。誰が、どのエージェントに対し、どのような権限を持っているのか。また、そのエージェントの行動は、誰が許可・指示したものなのか。どのエージェントが、どのシステムやデータにアクセスできるのか。これらをすべて視覚的に分かりやすく可視化する。

 また、Microsoft EntraやIBM Verifyと連携し、人間(ヒューマンワーカー)とエージェント(AIワーカー)を同格のアイデンティティとして一元管理できる。まさに、AIと人が自然と協働する組織のガバナンス基盤として機能するものだ。

 なお、既存のIdPにとって代わるものではない。ユーザーの環境に既に存在するOkta、Entra ID、Ping、IBM Verifyなどと連携して、エージェントレジストリや委任フローを提供する補完的な役割を果たす。

既存システム環境にAIエージェント側を最適化する:IBM Integration Intelligence Hub

 大規模なエンタープライズの事情として、テクノロジーやビジネスの環境が大きく変わる中でも、やはり既存のシステム環境や資産を出来る限り活かしながら必要な部分のアップデートを図っていきたいというのが本音だ。IBMは、そうした「既存との統合」をコンセプトとして非常に重視しており、今回、その統合をサポートする「IBM Integration Intelligence Hub」という機能をテクニカルプレビューとして発表した。

 組織は、既に保有しているAPI、ワークフロー、イベントなどを作り直す必要はない。同機能により、AIエージェントが既存の社内統合フローの仕組み・意味をすべて発見・理解し、人間の従業員と同じように活用・再利用できるようになる。もちろん、エージェントの暴走や不正を防止するための諸機能もビルトインされている。

 以上が、「②デプロイメント」における基調講演での主要なアナウンスとメッセージである。なお、「①データ」については既に公開している以下の記事を参照してほしい。

前回の記事:IBMが提案するエージェンティック時代のデータアーキテクチャ

 次の記事では、「③ランタイム」におけるアナウンスを取り上げる。今回述べたアイデンティティ管理/セキュリティなどの文脈で連続性のある話になっているため、弊媒体(EnterpriseZine)の「IBM TechXchange」コーナーにて順次掲載する記事をぜひご覧いただきたい。

 なお、これら3つの柱は、それぞれ組織内で担当部署や担当者は異なる領域かもしれないが、すべてがセットとなって、ようやく組織のエージェントネイティブ化が完成するものである。そのため、接続したフレームワークとして理解しておこう。また、ITの意思決定に携わる者は、これらすべてを統合したエージェント時代の戦略を立てていかなければならない。

 進化したBobの詳細な解説や、同社キーマンへのインタビュー、今回日本から現地へ足を運んだ参加者たちへのインタビューなども、近日中に記事を掲載予定だ。

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この記事の著者

名須川 楓太(編集部)(ナスカワ フウタ)

サイバーセキュリティとAI(人工知能)の分野を中心に、ソフトウェア/ハードウェアを問わず国内外の最新技術やルールメイキング動向を取材。そのほか、DX推進、IRなどのコーポレート領域でも情報を発信。※取材のご案内等は個人のメールアドレスか、EnterpriseZine編集部の問い合わせ窓口にお願いいた...

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