SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

最新イベントはこちら!

Data Tech 2024

2024年11月21日(木)オンライン開催

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けの講座「EnterpriseZine Academy」や、すべてのITパーソンに向けた「新エバンジェリスト養成講座」などの講座を企画しています。EnterpriseZine編集部ならではの切り口・企画・講師セレクトで、明日を担うIT人材の育成をミッションに展開しております。

お申し込み受付中!

EnterpriseZine(エンタープライズジン)

EnterpriseZine編集部が最旬ITトピックの深層に迫る。ここでしか読めない、エンタープライズITの最新トピックをお届けします。

『EnterpriseZine Press』

2024年秋号(EnterpriseZine Press 2024 Autumn)特集「生成AI時代に考える“真のDX人材育成”──『スキル策定』『実践』2つの観点で紐解く」

日本のデータベース研究最前線

特定時点の地図を生成する時空間GIS

第34回 過去のデータを蓄積しながら地図情報をデータベース化する


GIS(Geographic Information System:地理情報システム)を用いることにより、従来の紙ベースの地図では困難だった地理情報の高度利用が可能となっている。例えば、過去の地図と現在の地図を比較して地物の変化を知る応用は典型的である。しかし、そのためには過去の地図をデータベース化しておかなければならないが、これは大変コストのかかることである。今回は、デジタル地図を更新するときに過去の地図データを捨てず、実在時間(validtime)を用いて通時的に蓄積していくことでこの問題をクリアするという、時空間GIS「STIMS」の研究/開発を紹介してもらう。 (DB Magazine 2007年6月号より転載)

なぜ時空間管理が必要か

 GIS(地理情報システム)が扱う現実世界は日々変化しています。新しくビルや道路が作られ、昨今の市町村の合併では全国の市町村の名前も形も変わりました。

 しかし、多くのGISや地図情報サービスでは現在分かっている最新の情報のみが表示されます。Web上の各種地図サービスやカーナビでは、まさに現在の地図のみが表示されれば満足できるわけですが、一方で「特定の時間(年月日)の地図を見たい」「ある時の地図と現在の地図を比較したい」といった需要もあります。しかし、現在の多くのGISではこれらを行なえません。

 本稿で紹介する時空間GISは、常にデータ更新が行なえ、かつ必要に応じて過去の状況を自由に復元可能なシステムです。図1は東京周辺の1920年と2003年の道路網を示しています。時空間GISには存在時間の異なるデータが蓄積されていて、任意の興味対象時間(TOI:time of interest)を指定することにより、その時間の世界の表示や、その世界の上でさまざまな空間演算を行なえます。

図1 東京周辺の1920年の道路網(左)と、2003年の道路網(右)
東京周辺の1920年の道路網(左)と、2003年の道路網(右)

地物の実在時間

 時空間GISを実現するためには、各地物に実在時間を付与して管理します。すなわち、各地物に対して、それがいつ現実世界に現われ、いつ消滅したかを表わす2つのタイムプリントTsとTeを付与します。これを「実在時間(valid time)」と呼びます。ここで、Tsは調査すれば知ることができるかもしれませんが、Teは誰にも分からないのが普通です。例えば、今ある道路がいつなくなるかは分かりません。そこで、Teには常に将来に向かって伸びる時間(NOW)を与えておきます。

 図2は地物の実在時間を示しています。時空間GISは、指定されたTOIと交わる地物のみを表示したり、それを空間演算の対象とすれば実現できます。家の位置やレストラン、ホテルなど、ほかの地物と関係しない地物の管理ではこれで問題ありません。

図2 地物の実在時間とTOI
地物の実在時間とTOI

次のページ
必要なときにトポロジー情報を得る

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
日本のデータベース研究最前線連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

大沢 裕(オオサワ ユタカ)

埼玉大学大学院理工学研究科教授。1978年信州大学大学院修了。工学博士。現在の専門は時空間情報管理システム。毎年開催の国際会議ASGISを設立。IEEE、ACM、電子情報通信学会、情報処理学会など会員。GIS学会理事。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

EnterpriseZine(エンタープライズジン)
https://enterprisezine.jp/article/detail/254 2007/12/07 14:38

Job Board

AD

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング