エンジニアにとって、問題のあるプロジェクトへの対応ストレスだけが発病の原因ではありません。異動や、昇格、プロジェクトの終了など、環境の変化の中にも発病リスクは存在します。
発病のワナ!
SEのようなエンジニアが発病しやすいのは、プロジェクトで困難に陥った時はいうまでもありません。でも、「発病のワナ」はそれだけではないのです。

ワナその1「異動」
多くの会社はパッケージとシステム開発の両方で稼いでいますが、これらの二つは違います。この両部門を越える異動は心への大きな負担になります。
パッケージでは、お客は自分のやりたいことがある程度明確になっていて、過不足部分をカスタマイズすれば良いわけです。従ってお客にはパッケージの機能などを丁寧に解説したり、実際に走らせたりして、カスタマイズしたい部分を言わせて、そこに焦点をあてます。以上がパッケージという仕事の特性です。
一方、システム開発は、説明ではなく、顧客(ユーザー)が何をしたいのか尋ねるのが仕事。顧客は自分が何をしたいのか良くわかっていないことが多いのです。
極端な場合は、以下のような会話になるでしょう。
お客:「ともかく、効率的にしたいんだよね~」
エンジニア:「効率の指標って何ですか?」
お客:「指標? 利益を高くするのに決まっているだろ~」
エンジニア:「御社で利益を決める変数は何ですか?」
お客:「変数? そんなこと知らねえよ。在庫、在庫を減らしたいんだよ」
エンジニア:「在庫について説明してください」
根掘り葉掘り訊いて、コトバの意味(定義)を誤解していないかどうか、相手に確認していく。要するに顧客の言葉(意向、夢、構想、発想)を翻訳し、概念を定義して絵や文章とするのです。
従って言葉とその擦り合わせという対人業務の要素がより大きいというのが、SIの仕事の特性です。
仕事の特性が変わる異動は鬼門
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鈴木 安名(スズキ ヤスナ)
(財)労働科学研究所 主任研究員 医学博士(産業医、内科医)。旭川医科大学卒業。メンタルヘルス研究の成果にもとづき、企業の対策をサポート。著書は「人事・総務担当者のためのメンタルヘルス読本」(財)労働科学研究所出版部など多数。モットーは「現場のビジネスマンから学ぶ」。著者のサイト:職場のメンタルヘルス
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