2026年5月5日(米現地時間)、IBMは米国・ボストンにて年次カンファレンス「IBM Think 2026」を開幕した。
初日の基調講演に登壇した同社 会長 兼 CEOのアービンド・クリシュナ(Arvind Krishna)氏は、企業を取り巻く現況について「AI革命のDay 0」と位置づけ、企業間の“AI格差”が広がっていると指摘。経営層の80%がAIに期待を寄せる一方、具体的な価値創出への道筋を描けているのはわずか20%に過ぎないとした。
「AIはもはや業務効率化のためのツールではなく、ビジネスモデルそのものだ」とクリシュナ氏。局所的なAI活用に留まっている状態から、組織の中核的なプロセスにまでAIを組み込む「AIファースト」への転換を強く訴えた。
THINK 2026においてIBMは、AIファーストに向けた新たな製品ポートフォリオを発表。その中核を担うソリューションがAIコーディング・エージェント「IBM Bob」だ。
IBM Bobはアーキテクチャの設計からテスト、脆弱性スキャンなど、ソフトウェア開発ライフサイクル(SDLC)全体をエンド・ツー・エンドで自律実行する。IBMの社内検証では約8万人の開発者が利用しており、開発速度を3倍に向上させているとした。既にEYでは、IBM Bobのインメモリにおける独自処理による機能性などを評価し、税務申告業務への適用実証を進めているという。
また、無数のAIエージェントが自律稼働している状況下、企業におけるAIガバナンスと主権を確保するため、以下の主要アップデートも発表された。
- 「IBM Sovereign Core」の一般提供開始:地政学リスクや規制、データの所在を問わずに一貫したガバナンスを確保するためのプラットフォーム。Dell TechnologiesやAMDといったパートナー企業との連携により、“デジタル主権”をインフラレベルで実装できる
- 「IBM Concert Platform」のパブリックプレビュー開始:これまでの監視・可視化という枠組みを超えて、AI主導の自律的な対応までを実現する次世代プラットフォーム。既存ツールを活かしたまま、アプリケーションからインフラ、ネットワークまでを横断的に統合し、サイロ化した情報を一元化。脆弱性などの検知・対応を自動実行する
さらに2026年3月に買収を完了したConfluentとの技術統合により、IBM Zのデータをリアルタイムでストリーミング処理し、AIに連携させる「IBM Data Gate for Confluent」なども発表された。メインフレームを含めたハイブリッドクラウド環境下において、リアルタイムデータでのAI活用を促進する形だ。
加えて、基調講演でクリシュナ氏は「2026年中に量子コンピューティングにおける『量子優位性(Quantum Advantage)』を達成する」と宣言。米クリーブランド・クリニックや日本の理化学研究所らとの協業による、世界最大規模(12,000原子)の量子タンパク質シミュレーションの成功に言及。AIと量子コンピューティングを統合した「量子中心のスーパーコンピューティング(Quantum-centric Supercomputing)」という新たなパラダイムが、まもなく到来することを強調した。
なお、THINK 2026で発表された内容については、EnterpriseZineで後日詳細をレポート予定だ。
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岡本 拓也(編集部)(オカモト タクヤ)
1993年福岡県生まれ。京都外国語大学イタリア語学科卒業。ニュースサイトの編集、システム開発、ライターなどを経験し、2020年株式会社翔泳社に入社。ITリーダー向け専門メディア『EnterpriseZine』の編集・企画・運営に携わる。2023年4月、EnterpriseZine編集長就任。
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