最近はご家庭で使われるテレビの録画装置もDVDやHDDが主流になり、テープはどちらかと言うと時代遅れのような印象をお持ちの方も少なくないだろう。コンピューターの世界でも同じような印象を持つ方は少なくない。しかしコンピューターの世界では、テープは減り続けるどころか、その需要は以前にも増して多くなってきている。今回はそんなテープについて話を進めてみたい。(前半はこちら)
業界標準の地位を確立したLTO
LTOはIBM社とHP社、Seagate社(現在はQuantum社の子会社であるCERTANCE.社が継承)の3社が共同で開発したテープの業界標準仕様である。故にドライブを製造する権利はこの3社にしかない。LTOは当初Accelis(アクセリス)とUltrium(アルトリウム)という2つの方式が想定されていた。AccelisはIBMの3570 Magstar MP で採用されたダブル・リールで「ミッド・ポイント・ロード」というユニークな実装方式のテープ装置であった。

ミッド・ポイント・ロードはテープの開始位置と終了位置をテープ長手方向に対して丁度真ん中に位置させた方式である。こうすることによって、データへの平均到達時間を半分にできるため、通常のシングル・リール・テープに比べ、ランダム・アクセスに適するという特徴を持っていた。この方式はテープの中から特定のデータを探し出す時に特に有効な方式となるが、ディスクの高密度化が倍々ゲームで進化していた時期であったため、残念ながら需要が無いと言う理由でAccelisは製品化されていない。故に現在、単にLTOと言えば自動的にUltriumの事を指す。
UltriumはIBM 3480から踏襲されたカートリッジ仕様を踏襲したシングル・リール構造のテープで、現在までに第四世代まで製品化されている。Ultriumと書いて筆者は「アルトリウム」と読むことを推奨しているが、「ウルトリウム」と読んでも誤りとはいえない。日本ではウルトラマンの影響のせいか「Ult」で始まる英語は「ウルト」と読んでしまうような風潮があるからだ。しかしラジオのことを英語では「レイディオ」と発音することを覚えなければならないという先例もあるように、カタカナ風な英語読みよりも、できるだけ英語発音に近い読み方で覚えたほうが、覚えることが少なくなり、文化的にも効率的にもそのほうが良いことであると筆者は思っている。これを読んだ皆さんは是非Ultriumを「アルトリウム」と発音してほしい。
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佐野 正和(サノ マサカズ)
1986年日本アイ・ビー・エムの入社、本社SE技術部門で13年間ストレージ製品を中心に技術サポートを行なう。1999年にストレージ製品事業部に移り、以後、IBMストレージ製品の営業推進やソリューション推進、製品企画などの業務に携わる。現在、システム・ストレージ事業部でソリューション担当部長を拝任し、...
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