WebLogic Serverの製品戦略と今後の方向性
「WebLogic Serverの製品戦略と今後の方向性」と題した第一セッションの冒頭で、新井庸介氏は、「オラクルは今後もJavaの開発に積極的に投資を続ける。WebLogicについても買収以降、しばらく情報発信が弱かったが今後強力に推し進めていく」と語り、「来年(2012年)4月にJavaOneが7年ぶりに開催される。こちらにはぜひ参加をしてほしい」と呼びかけた。
WebLogic自体は15年の歴史を持つアプリケーションサーバーとして成熟した機能を持ち、ワールドワイドのシェアが2/5以上(Gartner調査結果)であることを述べた上で、最新のWebLogic 11gでのエンタープライズ向けの機能の拡充を解説した。11gの機能のポイントは、「開発生産性」「運用管理性」「オラクルDBとの親和性」「拡張性」であるという。
「開発生産性」ではZip形式でのディストリビューション、クラスローダ解析ツール、開発からデプロイとテストまでのサイクルの高速化などの機能強化。「運用管理」では、JRockit Flight Recorderによる障害対応、解析が強化されミッションクリティカルな監視・管理が可能になったことをあげた。またオラクルの様々な製品の運用管理をおこなうEnterprise Managerとの連携により、稼働管理、監視が飛躍的に向上した。そして「拡張性」ではOracleデータベースのクラスタリング機能である「Real Application Clusters(RAC)との連携性の強化を解説した。
JavaEE 6の重点解説 - そのアーキテクチャと新仕様
寺田氏はセッションのはじめに「JavaEEが重くて面倒と思っている人が多い。それはJ2EE1.4までのイメージ。StrutsやTomcatを使っている開発者も、JavaEEをぜひ再検討してほしい」と参加者に呼びかけた。そして2009年12月にリリースされたJavaEE6の重点を、下記のいくつかのポイントに要約した。
・拡張性
- springやStrutsといったフレームワークの読み込み設定がフレームワークごとに独立して書けるため、メンテナンスが非常に楽になった。
・webプロファイル
- JavaEEのサブセットをプロファイルとして提供。Web開発などを軽量なサブセットでおこなえる。
・仕様の削減
- JavaEE5までの肥大化して使われなくなったAPIなどを、Prunning(せん定)する。ただし実際に削除されるのは、次期バージョンから。JAX-RPCなどを使用している場合は今のうちに移行を推奨。
・かんたん開発
- Oracle JDeveloper、eclipse、JBuilderなど自分の好きな環境で開発が可能。
・開発効率向上
- JavaServer Faces2.0によりかつてのVisual Basicのようにコンポーネント開発が容易にできる。
- コンパイルしてclassをロードして動作確認するのではなく、XMLパーサ上で動作確認できる。
- Web開発などでのテンプレートの活用、たった1行の追加でAjaxが使用できる。
- アノテーションによる宣言的プログラミングによるXML設定地獄からの脱出、コンテナの軽量化。
こうした重点機能を開設し、「Tomcatを使用していても結局、strutsなどいろいろフレームワークを自分で設定しているのではないか。今後は標準技術の強みを生かしたWebLogicだけで事足りる」としJavaEE6は、「現時点での集大成である」と締めくくった。
JavaEE キーパーソン座談会
最後に行われたパネルディスカッションでは、日本オラクルの伊藤 敬氏がモデレータをおこない、パネリストとして、Publickey編集長の新野淳一氏、三菱UFJインフォメーションテクノロジーの斉藤賢哉氏、オージス総研で「達人プログラマーを目指して」のブロガーでもある浅井良氏が、システム開発の現場から見たJavaEEの現状について語った。
いくつかの論点の中で、目立ったのは、Java EE の仕様と開発の現場のニーズにギャップがあるという議論である。斉藤氏は「現状ではまだStrutsに習熟したメンバーが多い」と語り、浅井氏は「昔ながらの開発手法がいる一方で、新しいフレームワークに取り組むメンバーも増え二極化している」と語った。背景にあるのは、元請けのSI企業やユーザー企業の事情であるという。彼らの第一の関心はUIやレスポンスなどの目に見える部分であり、開発生産性を説得してもさほど関心が示されないというのだ。
さらに浅井氏は、「米国ではユーザ企業が開発の主体であるため、Javaの目標である保守性、再利用性、拡張性といった概念が浸透しているのだが、日本ではSIerが主体のため納期完了が優先され、Javaのアーキテクチャによる開発が採用されづらい」と述べ、斉藤氏は「日本の銀行の開発の立場としては、やはり標準をどれだけおさえているかが重要」と語った。
このように従来のエンタープライズの領域では、さほど大きく進展していない感のあるJavaEEであるが、新野氏は、「楽天などのWeb系企業では、従来のエンタープライズとはちがった意味でのミッションクリティカル性が必要とされている。よりコンシューマーに近いこうした企業の開発現場のニーズに応えることが重要」と新しい分野での可能性を指摘した。
またJavaの開発簡易化を表すEoD(Ease of Development)の流れがJavaエンジニアに及ぼす影響について、浅井氏は「コピペや労働集約型の開発が必要でなくなり、かえって頭を使う開発が重要となる」と語った。
新野氏は「JavaVMの上で他の言語も動く時代、エンジニアは多能工として複数の言語を使いこなさなければならない」とつけ加えた。
このように、Java EEが現在の開発現場への浸透についてはそれぞれの問題が指摘されながらも、その存在価値はクラウドやモバイルに向かう今後、さらに重要性を増すだろうという意見で一致をみた。