SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

最新イベントはこちら!

Data Tech 2024

2024年11月21日(木)オンライン開催

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けの講座「EnterpriseZine Academy」や、すべてのITパーソンに向けた「新エバンジェリスト養成講座」などの講座を企画しています。EnterpriseZine編集部ならではの切り口・企画・講師セレクトで、明日を担うIT人材の育成をミッションに展開しております。

お申し込み受付中!

EnterpriseZine(エンタープライズジン)

EnterpriseZine編集部が最旬ITトピックの深層に迫る。ここでしか読めない、エンタープライズITの最新トピックをお届けします。

『EnterpriseZine Press』

2024年秋号(EnterpriseZine Press 2024 Autumn)特集「生成AI時代に考える“真のDX人材育成”──『スキル策定』『実践』2つの観点で紐解く」

EnterpriseZine Press

まつもとゆきひろ氏が語る「言語の世界」の過去・現在・未来

「Developers Summit 2012」レポート

未来に求められる言語の姿

 ITの世界ではときどき、1年後、5年後、10年後といった近い将来を占うことが行われる。そんなときは、これまでの歴史を振り返ってみると、意外と見えてくるものが多い。いわゆる"温故知新"である。まつもと氏はコンピュータの世界においては、歴史の振り子は常に、

・集中vs.分散

・性能vs.生産性

・静的vs.動的

・正確さvs.柔軟さ

 のどちらかの側に振れているという。「昔は組織には、大きなホストコンピュータが1台しかなかった。人々はそのまわりに電話回線を巡らせて、周囲に端末を置いた(集中)。でも1台のマシンの性能には限界がある。だからホストコンピュータの性能を上げることよりもその価格を下げるほうにトレンドが傾いた。すると台数が増えて今度は分散するようになり、そのうちにWebが登場した。言うなればブラウザは、昔のホストコンピュータのまわりにあった端末のようなもの。Amazonのクラウドなんてまさに"集中の中の分散"を象徴している」(まつもと氏)。

"Enjoy Programming"生みの親が心の底から楽しみながら作った言語、それがRubyだ

 言語の世界も同様だ。コンピュータの性能を上げるのではなく、言語で生産性を高めていこうとしたからこそJavaやRubyが生まれた。歴史の振り子が次に振れていく先を見つめれば、未来にあるべき言語の姿は自然と現れてくる。

 まつもと氏は「新しいぶどう酒は新しい皮袋に、古いぶどう酒は古い皮袋に」という聖書の言葉を引用し、新しい時代はやはり新しい言語が必要になると説く。「大規模分散と高抽象度、これが新しい言語のポイントになる。マルチコアやクラウド、ビッグデータ、ソーシャルゲームといったトレンドが進めば、近い将来必要とされるのはErlang、Node.js、R、SQLの発展形なのでは」(まつもと氏)。

・Erlang :分散とアクターモデル。既存の言語にアクターモデルが付いてカバーされるかも?

・Node.js :大量アクセスと非同期モデル。非同期I/Oによって多重化する発展形が流行るかも?

・R :統計/解析とビッグデータ連携(R-ODM)。非常にニーズが高まっている

・SQL :宣言的データ取得と高抽象度、そしてHive。本質は宣言的データ取得。SELECT文など、具体的にどうすべきとかあまり考えなくていいところがすばらしい

機械の中に自分の宇宙を作る、それがプログラミングの魅力

 みずからを"言語オタク"と称するまつもと氏は、講演の終盤、"言語の楽しさ"についてこう語った。 「僕にとって言語の楽しさとプログラミングの楽しさは同義。言語を通さないとプログラミングはできない。はじめて買ったポケットコンピュータ、それも行編集しかできないような代物だったけど、自分が思ったとおりにコンピュータが動くという楽しさを実感した。まるで犬にお手をさせるような感覚に近い。機械の中に自分の宇宙をつくる―それがプログラミングの最大の魅力」。

 「処理系を作るのはすごく楽しい。言語実装はプログラミングの総合芸術だと思う」。 「言語設計とは、発想をプログラミングすること。つまりRubyプログラマは、Rubyの発想に染まっているといえる。ということは、Rubyプログラマは僕の発想でプログラムされているんですよ(笑)」。

 会場を埋め尽くした300人を超える聴衆に、広くて深い言語の世界を垣間見せてくれたまつもと氏。最後は「新しい言語を作ったり、既存の言語を伸ばしたり、言語を使ってプログラミングしたり…、とにかく楽しんでプログラミングしましょう」と"Enjoy Programming"のメッセージを残してくれた。生みの親が心の底から楽しみながら作った言語、それがRubyだ。世界中で愛される理由のひとつがそこにある。

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
EnterpriseZine Press連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

五味明子(ゴミ アキコ)

IT系出版社で編集者としてキャリアを積んだのち、2011年からフリーランスライターとして活動中。フィールドワークはオープンソース、クラウドコンピューティング、データアナリティクスなどエンタープライズITが中心で海外カンファレンスの取材が多い。
Twitter(@g3akk)や自身のブログでITニュース...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

EnterpriseZine(エンタープライズジン)
https://enterprisezine.jp/article/detail/3826 2012/03/05 07:00

Job Board

AD

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング