稟議でよく散見されるノーツ移行の理由に「ノーツという"製品"に課題があるから新システムに移行する」がある。一見、問題がないように思える。しかし、ユーザー所管のノーツアプリが多い場合は"製品"を理由にしてユーザー調整すると失敗する。なぜならば、新システムは、ユーザー所管のノーツアプリの移行ができないからだ。真の課題は、"製品"ではなく、エンドユーザーコンピューティング(EUC)だ。
ノーツの移行を困難にしている原因
ノーツの移行を困難にしている原因は、エンドユーザーコンピューティング ( EUC ) だ。ノーツのEUCは、デザイナー(IBM Lotus Domino Designer)で実現される。デザイナーは、ユーザーでもアプリを開発できる特徴がある。開発言語は、@関数とロータススクリプト(LotusScript)だ。
過去に開発権限を情シスから委譲されたユーザー部門の開発者は、デザイナーを使ってアプリ開発をする。ユーザーが数年かけて開発したアプリは、情シス担当者から見ても高度で複雑なロジックでできている。

情シスが提案する最新の製品は、最新のWeb技術を多用したものだ。これは、情シス技術者が保守開発をすることを前提としている。つまり、EUCでの使用を前提にしていない。なぜなら、高度なWeb技術で開発するスキルをユーザーが身につけるのは負担が大きいからだ。
確かに、移行ツール等を用いてアプリを新システムに移行することは可能だろう。しかし、新システムに移行後に、ユーザーが@関数やロータススクリプトを使って開発保守を続けることはできない。したがって、EUCの産物であるアプリは、ノーツの移行を困難にしているし、EUCそのものが原因と言える。

EUCを続けるか?止めるのか?この問題に着目せず、新システムがノーツより優れているからと移行してしまうとどうなるか?次ページで考えてみよう。
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茉璃 美昌(マリ ヨシアキ)
1993年初夏、発売前の日本語版ロータス・ノーツ R3J のベータ版を IBM PS/55 note C23V (OS/2)に IBM 社員 として初めて導入しデモ環境を作成。ノーツでは初のIBM 認定スペシャリスト。エグゼクティブ・セミナー講師や提案活動を通じノーツ普及に努める。IBM 退職後もバ...
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