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マイクロソフト北川さんとお話

データベースは○×表で戦うべからず―北川、業界の悪しき習慣に吠えるの巻

「最近僕が憤っていることをききますか?」―開口一番、なにやら穏やかでない7月の北川さん、いったい何があったのでしょうか。

 北川:今、僕が猛烈に怒っていること。共有しましょうか。

 ―はい

 北川:これです。

これは…(*都合上、ぼかしをかけています)
これは…

 ―これは…Excelシートですね。なんのシートですか?

 北川:機能比較表です。○×表と呼ばれたりもしています。○×表ってみんな大好きじゃないですか。エンドユーザーのみなさんもデータベースを導入するときに○×表をほしがるんですね。

 ―あの会社のデータベースは、これができるけど、この会社のデータベースはできない、そういうことを表わした表ですね。そう言われてみると、データベース以外にも機能比較表ってありますね。

機能を比較する○×表
ありますね、○×表

 北川:電子レンジにもありますね。メディアさんの広告営業にだって比較表あるんじゃないですか?[紙雑誌/日経BP→○/DB Online→×]とか。かように世の中は○×表だらけです。だけど、僕はこの○×表ってすごくナンセンスだと思うんです。

 ―はい。今日の憤りのターゲットは○×表ですね。

 北川:業の深い○×表がどうやって生まれるのか、お話ししましょう。ある会社がデータベースの導入を検討しているとしましょう。そこで、ある企業―仮にA社としましょう―に、比較表を作らせるんですね。A社は、自社の機能と、マイクロソフトのSQL Serverの比較表を作る。導入を検討している企業は、A社が作った○×表を僕らに回してきて、「A社はこう言っているけど、どう?反論があったら言って」とくるわけです。

 ―回ってくるんですね、他社の作った○×表が…

 北川:○×表にもいろいろなレベルがあります。まずは、どうしようもないけど、そんなに業が深いわけでもない○×表は、それぞれの機能一覧持ってきて、というもの。

 ―ジャンルは違いますが、さっきのauのやつみたいな…

 北川:そうです。あれがよくある○×です。しかし、もっと業の深い比較表が、最初に挙げた資料です。

これです(再掲)
これです(再掲)

 ―テキストの量が多いですね。これは…

 北川:機能比較だけでなく、コメントまで書かせるものですね。赤字部分は、A社のコメントを受けての、マイクロソフトの見解です。

 ―セルが…

[Microsoft見解]が、セルにおさまらない
セルにおさまっていない

 北川:おさまりきらないくらい言うことがあるんです。

 ―Excel上で繰り広げられる壮絶な戦い…

 北川:ナンセンスだと思いませんか?自社製品でもないのにどうやったら「実績も少ない」と言い切れるんでしょうか。それはフェアじゃない。僕らは、機能比較表自体には意味がないと思っているんです。お客さんには「やりたいこと」「実現したいこと」があるのであって、大切なのはそれをどうやるか、でしょう。

 ―「機能」は目的のための手段に過ぎませんよね。

 北川:この比較表の良くないところは、機能要件までA社が決めているということです。「これを実現するにはこの機能が必要です」という項目を勝手に決めている。だけど、何かを実現するのに必要な機能というのは、各社によって見解が異なるわけです。お客さんが機能要件までを書くならまだわかりますよ。でも、競合のどちらか1社が機能要件を決めるというのはおかしいと思いませんか?

「競合のどちらか1社が機能要件を決めるのはおかしい」
これは…

 ―ゲームのルールを片方が決めるようなもの?

 北川:そうです。自社の都合がいいように機能要件を書いたものに対して、マイクロソフトには×をつけてくる。自社が×にならないように作るに決まっているじゃないですか。勝手に要件を決めて。バツ!バツ!バツ!って!おまえんとこオプションオプションオプションって書いてあるじゃないか!(裏声)

 ―これって最初に書いたもの勝ちなのでしょうか?たとえば、マイクロソフトが先に機能比較表を提出することになった場合はどうしているんですか?やはりマイクロソフトに都合のよいExcelシートを作るんじゃないですか?

 北川:まず、そもそも、機能比較表はあまり意味がないことをお伝えします。それでもほしいと言われた場合は、検討表というものを提出します。

 ―検討表?

 北川:業が深くないタイプの機能比較表です。

業が深くないタイプの機能比較表、「検討表」
業が深くないタイプの機能比較表、「検討表」

 北川:まず課題があります。「DISK IOが高い」という課題。これに対して、こんな機能があります、機能概要はこれです、メリットデメリットはこれです、と書いてある。そして、ここが大事なんですけど、評価するのは、お客さんです。

課題があり、それに対応する機能を提示、機能概要とメリット・デメリットがある。
課題があり、それに対応する機能を提示、機能概要とメリット・デメリットがある。

 ―○か×をつけるのはお客さんだということですね。たしかに、先ほどのExcelに比べてフラットですね。

 北川:さっきのような邪悪さがないでしょう。「意図するインデックスが使われない」っていう課題に対してどうするの?暗号化はどうするの?ロックエスカレーションがおきたときにどうするの?・・・提案する僕たちは、課題に対する機能を提示する。評価はお客さんがする。どうです、まっとうでしょう。

「あらまほしき機能比較表」を説く、7月の北川さん。
「あらまほしき機能比較表」を説く、7月の北川さん。

―まっとうですね。ところでこうした○×表っていうのは、文責はその企業単位なんですか?執筆者というか、記入した人の名前などはないんですか?

 北川:どっちも無記名ですね。無記名で泥仕合をしているわけです。もはや揚げ足のレベルを超えている。

 ―今日はたいへんご立腹の様子でしたが、こういうことはよくあることなんですか?

 北川:いつもこうですね。最近続いたので、怒りが爆発してしまいました。いつも怒ってるんですけど。その度にいつも説明しに行きます。ちゃんと説明すればわかってもらえるけど、毎回行かなければいけないのかと。

 ―なんていうか、もっと中立的なひとが書くわけにはいかないんでしょうか。パートナーさんとか?

 北川:それもありかもしれません。でも、それより、オープンな場で討論会がしたいです。記録に残しておきたい。「データベース選定時に検討すべき事項」。DB Online主催で、どうですか!

 ―はい!検討してみます。そして憤りはある程度、共有できたような気がします。しかし、データベースの機能や値段には、まだまだブラックボックスがあるような気がします。次回はそのあたりについてさらにくわしくお話をうかがいたいと思います。今日はどうもありがとうございました。

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この記事の著者

小泉 真由子(編集部)(コイズミ マユコ)

情報セキュリティ専門誌編集を経て、2006年翔泳社に入社。エンタープライズITをテーマにイベント・ウェブコンテンツなどの企画制作を担当。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://enterprisezine.jp/article/detail/4078 2012/07/24 00:00

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