いきなりビッグデータではなく、データ分析を始めることが大事
インターネットの普及は、非対面コミュニケーションの増加、生産側主導から生活者主導への転換などをもたらし、市場環境の変化が急加速している。そこで「企業におけるデータ分析の必要性が高まっていく」と判断した草野隆史氏は2004年「データマイニング&最適化」に特化した企業、ブレインパッドを立ち上げた。同社では具体的には大きく、3つの事業を行っている。
まず「アナリティクス事業」は、企業の蓄積データの分析業務を受託するものだ。そこで用いられている分析技術を使ったネットサービスを提供しているのが「ASP関連事業」。3つめの「ソリューション事業」は、CRM&分析ソフトの販売やシステム構築になる。
現在、ブレインパッドの顧客は、外食、金融、EC・通販・小売、広告代理、旅行・運輸、通信・メディアの各業界の大手が中心だ。草野氏は創業時「大手は分析を自前で行っているだろうから、中堅企業が顧客ターゲット」と想定したが、意外に大手もなかなか手が回っていないことが分かった。そこで「現在はデータ活用に課題を持つ、各業界の大手企業ともお付き合いをし、貴重な経験をさせていただいている」(草野氏)。
いわゆる「ビッグデータ」市場の成長ということでいえば、やはり米国が先行しており、今後5年で約10倍になるとされている。すでに成功事例も数多くあり、たとえば米国大手スーパーマーケットのTARGETでは、顧客の購買履歴から女性客の妊娠と出産予定日まで推定し、タイミングに合わせて関連商品のクーポン券を送るなどの施策を実行している。そのほかにも様々なシチュエーションに合わせたきめ細かい対応を可能にするデータ分析を行い、業績をアップさせている。
一方、日本でも「ビッグデータ」に関する報道、イベント、検索などが急増しており、関心が高まっていることが実感できる。しかし今後5年の市場規模は、米国の10倍に対し、日本は3倍と予測されている。実際、2012年にリクルートが実施したアンケート調査では、約7割の企業が「ビッグデータ分析の要望無し」と回答している。
さらに実際に活用されているデータは、顧客属性データ、購買履歴データ等の構造化データが大半を占めている。今後分析に活用したいデータについても、引き続き構造化データへのニーズが圧倒的に高く、ビッグデータの代表格である非構造化データへの関心が薄い。
そこで草野氏は「当面、ビッグデータを蓄積している、あるいは蓄積できる日本の企業は限定される」と見ている。また、多くの企業において、従来の構造化された社内データの活用もままならない中、データの量と種類の増加や発生速度・更新頻度の向上で、その状況が改善する事はない。
実際、ペタ単位のデータ蓄積環境への投資から十分なリターンを引き出すのは、難度の高い仕事だ。日本の企業の場合、まずは、ビッグデータに限定せず、社内のデータ活用自体の取り組み方から見直す方が、ROIが高い。そこで草野氏は「大事なことは、ビッグデータではなく、実際の施策に結びつけるためにデータ分析を始めること」と強調する。