現状は分析インフラ投資優先で、なかなか人材まで手が回らない
では、実際に企業がデータ分析を行う際、どのような問題、課題があるのか。まず、企業データ分析に対する現状のアプローチは、「インフラ投資優先型」になっているところが多い。分析ツールへの投資まで進んでいる企業もあるが、ここで息切れになっている。人材の採用、教育などは限定的だ。
草野氏は「データ分析を実際に施策の改善につなげるためには、“施策課題優先型”のアプローチが必要」と指摘する。どういう施策をするのかが決まらないと、「どういうデータを蓄積するのか」、「どういう分析をするのか」が決まらない。活用方法が決まらなければ、貯めたデータは単なるコストになってしまう。
変化し続けるビジネスで、十分にデータを活かすには、データとITとビジネスの現場を繋いだ分析視点での動的な全体最適化が必要だ。つまり、分析と施策への十分な投資、構築よりも運用に投資比重を厚くする。データ収集、データ蓄積は主に情報システム部の担当であり、データ分析、施策実施(改善実現)は、主にビジネスサイドの担当、というアプローチが必要になる。
「施策課題優先型」分析アプローチを実現するデータ環境
草野氏は、ビジネス部門主導で分析アプローチを効果的に進める分析環境は、以下のような要件を満たしている必要があると考えている。
まず「データ蓄積」では、常に分析に“使いたいデータ”が“使える形”で“統合的に”管理されている環境だ。「データ分析」では経営環境、企業目標の変化に柔軟に対応するために、多様な分析アプローチに迅速に対応できる環境ということになる。「データ活用・共有」では、直近の分析結果を、必要とする人が常に参照、活用でき、また分析結果が、次の施策のインプットとして活用できる環境が必要になる。
企業内の各部署で分散して管理されている多様な形式のデータから、分析に使う可能性のあるデータを、いつでも、直近のデータが使える状態に統合されるような環境構築が重要。
外部環境(競争環境)の変化、企業目標の変化、KPIの変化に柔軟に対応するため、また、環境変化の激しい昨今、分析結果を新鮮なうちに施策に適用するために、大量データを様々な分析アプローチで高速に処理できる環境を用意することが求められる。
また、分析結果をダイレクトに施策に展開できるように、各種タッチポイントに対するアプローチシステムと連携していることが望ましい。また、各種データ及び分析結果は、自社の施策実施担当者、及び分析官が、共に参照し、作業を行える環境が望ましい。
では分析をする人はどう担保するのか? 実際、その育成や、経験と能力のある人材の採用は簡単ではない。そこで有力な選択肢として考えられるのが、外部リソース(システム、人材)の活用だ。その事例として草野氏は、ブレインパッドがサポートしたある化粧品通販業者のケースを紹介した。