ネット選挙をきっかけに「政治家」と「有権者」の関係が変化する
2013年7月に行なわれる参議院議員選挙から、インターネットを活用した選挙運動が開始される。選挙運動とは、選挙期間中に「誰々に清き一票を」のような、投票を促す行為のことを指す。これまでは、公示日の前日にブログやSNSなどの更新を停止し、ビラやポスター、街宣車や街頭演説といった活動のみが選挙運動だったが、参議院選挙以降からはウェブサイトやSNSなどの更新をし、選挙の様子を発信することが可能となる。
もちろん、今回の改正ですべてが利用可能となったわけではない。政党や候補者はメールを通じて有権者に活動を訴えることができるが、有権者はメールによる選挙運動は禁止されているため、メールを通じて友人に投票を呼びかけることはできない。ブログやSNSの更新による選挙運動は可能だ。政党によっては、スマートフォンアプリを配信し、随時政党や候補者の様子を発信している。
また、政党にのみ選挙用サイトへの導線としてバナー広告を出稿することができる。ネット上も含めて誹謗中傷やなりすましなどの行為に対しては、罰則が付与されている。その他、選挙権を持っていない未成年などの選挙運動も禁止されている。
ネット選挙運動の解禁によって何が変わるのか
「選挙期間という、有権者にとって最も選挙や政治に関心の高い期間に有効な情報発信がこれまでできなかった。そうした状況が改善され、SNSやブログがリアルタイムで更新されることで、政治に関心があった人のみならず、これまでの選挙運動では選挙情報にリーチできなかった人たちに届くようになったことは大きい」
若者と政治をつなぐ活動を行なっているNPO法人Youth Create代表の原田謙介氏は語る。特に、SNSはリアルでの情報発信と拡散力があり、候補者は選挙運動で感じたことを率直に発信し、有権者も生の情報を受取りコミュニケーションができるツールとして重要なメディアとなっている。有権者もネットを活用して選挙運動が行えるため、特定の候補者などを応援するためのウェブサイトやSNSでの情報発信を行うことが可能だ。
しかし、いざネット選挙運動が可能となっても、有効に活用されなければ意味がない。
「TwitterやFacebookなど、それぞれのツールに応じたコミュニケーションデザインが求められてきます。発信としてのツールだけではなく、有権者に意見を求め、有権者の声を聞かせて欲しい、という姿勢を取っている人は少ない。ちょっとした使い方で有権者の意識は変わるため、コミュニケーションのあり方を考える必要がある」
ネット選挙においても一方的な発信だけでは、せっかくのインターネットの特性である双方向性が活かされていない。ソーシャルメディアを通じた活用は、まだまだ模索段階とも言えるだろう。